今年の初笑いは何だった?【千葉市】

 1月8日(日)、千葉市中央区にある青葉の森公園芸術文化ホールでは、『見る、知る、伝える千葉~創作狂言~ちばわらい』が上演された。当事業は、公益財団法人千葉県文化振興財団、和泉流狂言師の小笠原由祠(おがさわらただし)さんや千葉大学の学生、さらに県民とで作り上げる舞台だ。

 

 この創作狂言は、平成17年度から続いている取組み。当振興財団の担当者は、「狂言にすることで、千葉に面白い伝承があることを色んな方に知ってもらいたいです。さらに、本格的な狂言だと敷居が高い方でも、創作狂言であればより親しみやすいと思います。日本には能や歌舞伎などいくつも伝統文化がありますので、触れるきっかけになったら嬉しいです」と話した。

 今回題材となった『ちばわらい』は、千葉市中央区にある千葉寺での行事が基になっている。それは、大みそかの夜のこと。近隣の人々は、仮面やほっかむりをして境内に集まった。日頃のうっ憤を晴らすために顔を隠し、商人や周囲の人間の悪口を言い合った後、大笑いをして新年を迎えていたという。人々は、この悪口の的にならないように日々身を慎んで生活していたとか。これを題材として小笠原由祠さんが台本を書き、千葉大学の学生たちがネタを提案。普遍教育『伝統文化をつくる』の授業の中で、舞台制作を学びながら学生ならではのアイディアを盛り込み、台本から小道具、チラシに至るまで様々なものを手掛けた。実際に舞台稽古が始まったのは10月から。県民参加者も加わって、小笠原さんや弟子の加藤充華(かとうあつか)さん指導の下、熱い練習を繰り広げた。

 当日、会場には約250人の観客が訪れ、大きな笑いが広がった。うっ憤となるネタは身近なもので、それをバッサリと斬る!『勉強して大学に入ったけれど、オンライン授業ばっかりだ!』『母ちゃんは飯も作らず、デリバリーばっかり!』や、『コロナでマスクがはずせない』、『うちの父ちゃんメタボ腹』というものまで。誰しもが、どこか『分かる!』という気持ちだったのではないだろうか。参加した県民からは、「初めは能と狂言の違いも分からなかったけれど、面白さや奥深さを知れた。演じきった時の達成感やお客様の拍手が忘れられません。皆さんに感謝です」「観客の方々の笑い声がよく聞こえました。温かい雰囲気の中、緊張よりも楽しさが勝り、伸び伸びと舞台に立てました」という感想があった。

 行事『千葉笑い』は、明治時代に途絶えたが、平成22年に復活。次世代に残したいと思う『ちば文化資産』にも登録されていて、最近では大手TV番組でも取り上げられるほど。千葉県の中には、たくさんの伝承や言い伝え、行事が生きていることを忘れずに、後世に引き継いでいかねばならないのだろう。

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