懐かしのシネマ~黒澤明監督5作品48時間フエスティバル~

 今回から前後編で、世界に名を轟かせた黒澤明監督に関するお話です。黒澤明:1910年(明治43年)3月23日生~1998年(平成10年)9月6日・88歳没。

 48年前、『黒澤明監督5作品48時間フエスティバル』を企画し、都内で興行しました。大絶賛を受けたあの興奮をもう1度再現したく、『黒澤明監督生誕100年記念フェスタ』と題し、お届けします。この『懐かしのシネマ』がなかったら、一生発表することのない興行だったでしょう。ただ、資料が残っておらず、頭の中の記憶をしたためますので、勘違いもあると思います。ご容赦ください。

 企画の最初の難関は、フィルムの買い付けです。これは懇意にしていた東宝の営業マン(I氏)に賛同してもらい、彼が支社長を説得してくれ、結果、特例で5本のフィルムを出してもらうことができました。そして上映当日は、長時間見ているお客様に一体感を味わってもらうこと、お客様とコミュニケーションを取ること。5本の映画が終わるのに1日約12時間、誰もが初めての体験です。企画書を何度も練り直しましたが、皆さんが受け入れてくれるのか、一抹の不安は拭えませんでした。

 開催は1975年(昭和50年)10月11日(土)・12日(日)の2日間。土曜の朝8時にスタートし、日曜22時ごろに終了です。お客様の疲労を考え休憩時間は多めに取りました。座席は1階500席・2階250席。予告して9月になると電話が多くなり、10月には朝から夜まで鳴りっぱなし!さらに初日の朝5時の劇場前には、驚くことに200人位が並びました。それまでの私の不安が、払拭された瞬間でした。

 入場開始は7時。アッという間に750席が埋まります。館内放送での注意事項が終わり、各扉が閉じられると、館内から大きな拍手が。トップは『七人の侍』です。始まったらお客様とコミュニケーションを取るのが自分の仕事。休憩ごとの対話ではすぐに20~30人位の輪ができ、今回の映画の話で盛り上がります。途中退館する方もほとんどおらず、帰る際には「素晴らしい企画でした」「次はチャップリン特集もぜひ」と握手を求められ、2日間で配った名刺も400枚近く。普段の上映会では「有難うございました」のお礼で終わりますが、他府県から来た方も多く「お疲れ様でした・気をつけてお帰りください」と挨拶したことは、今でも鮮明に覚えています。お客様をすべてお見送りし、48時間興行は無事終了。私にとってこれほど充実し成功した上映会は、後にも先にもありませんでした。

 次回は作品紹介&黒澤組と俳優たちのお話をいたします。お楽しみに!

 

◇黛葉(まゆずみ・よう)
茂原市在住。1942年生。元映画配給会社宣伝プロデューサー。現役時代は年200本以上を鑑賞、現在、放送された洋邦画の録画DVDは1100枚以上にのぼる。

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