本をかすがいに 人と地域と繋がる ビブリオバトルで新しい出会いを~長南ビブリオカフェ~【長南町】

『長南ビブリオカフェ』は毎月最終土曜日に、参加者が紹介したい本を持ち寄る書評合戦・ビブリオバトルを開催している。『長南ビブリオカフェ実行委員会』の代表を務める今井洋祐さんと齋藤麻由美さんはともに長南町の出身。2018年9月より活動を開始し、同町の廃校をリノベーションした宿泊施設『仲間と泊まる学校ちょうなん西小』の図書室を主な拠点としている。『人を通して本を知る。本を通して人を知る。』がコンセプト。2021年にはビブリオバトル普及委員会より『ビブリオバトル・オブ・ザ・イヤー2021』の特別賞を受賞した。

どんな本に会えるだろう?

 ビブリオバトルとは、2007年に京都大学大学院生だった谷口忠大さん(現立命館大学教授)が考案した書評ゲーム。ルールは、発表参加者が読んで面白いと思った本を1人5分間で紹介し、発表後に2~3分の質問タイム。「どの本が一番読みたくなったか」を基準に投票し、最多票を集めた本をチャンプ本とするものだ。自分がみんなに紹介したいと思う本であれば、絵本、写真集、マンガ、雑誌、電子書籍、どんな種類の本でも構わない。

 4月27日に行われた第64回長南ビブリオカフェには、オンライン参加者1名と見学者1名を含む計10名が参加した。代表の今井さんの進行で、まずは全員の自己紹介から。参加者は全員が発表しなければならないわけではなく、観戦のみでもいい。この日の発表者は5名だった。

 トップバッターは、岩田親靜さん。岩田さんは、住職を務める千葉市緑区の日蓮宗本休寺にて、自らもビブリオバトルを開催している。持参した本は『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』(岡真理著)。次いで発表の森田直美さんは、成田市の『もりのビブリオバトル』のメンバー。『ハイブリッドワーカー~会社勤めしながらクリエイティブワークする』(ヨシナガ編)を紹介した。3人目、同カフェ実行委員でもある大塚優介さんのお勧めは、プレーステーション2のゲームソフト『ICO』。「ゲームを買ってもらった帰りの車の中で待ちきれずに説明書を読んでいた子どもの頃。物語形式の説明書は唯一無二で、手に取った瞬間からゲームの世界に入りこんだ」との思い出を披露した。『魔法少女はなぜ変身するのか~ポップカルチャーのなかの宗教』(石井研士著)を取り上げたのは、オンライン参加の堀越直仁さん。5人目は、見学者の高尾晶志さんが急きょ参戦。瀬名秀明著の約30年前の作品『BRAIN VALLEY』を「フィクションを科学的に議論し説得力があるSF」として紹介した。

 投票の結果、司会を除く9票中7票を獲得して、『ハイブリッドワーカー』がチャンプ本に輝いた。参加者からは「2009年発行だが、企業が副業を容認する傾向にある現在により通ずるものがある」「現状に満足できず変身願望を持つ現代人が多いのでは」などの感想があがった。

人の思いを繫いでいく本

『千葉県子ども読書の集い』に参加した実行委員。(左から)齋藤麻由美さん、今井洋祐さん、大塚優介さん、大塚栞さん

 長南ビブリオカフェの創設は、今井さんが1冊の本と出合ったことがきっかけだった。東日本大震災の語り部のイベント会場で手にしたその本は『女川一中生の句 あの日から』(小野智美編)。津波に襲われた宮城県女川町の中学生が五七五に込めた思いを綴ったものだ。「震災の記憶は風化が進む。当事者の言葉に触れて、これだけの思いが詰まったものを自分だけでなく他の人にも読んで欲しいと強く感じた」という今井さんが相談した相手が、もう1人の代表の齋藤さんだった。「本の紹介と言えばビブリオバトル」との齋藤さんの一言から、長南ビブリオカフェが誕生した。5名の実行委員のうち、今井さんをはじめ4名が茂原市役所の職員。「みつばちのように人や地域を繫いでいきたい」と、ボランティア活動にも尽力する。

 常連の参加者は、「大好きな作家に出会えた」「いろいろなジャンルに興味が持てるようになった」「行動範囲が広がった」などと口々に語る。「チャンプ本を決める投票は誰が話がうまいかではなく、どの本を一番読みたくなったかを基準にすることがポイントです。次々と紹介される本と1対1で向き合って、自分にとってこの本は…と考える時間が貴重です」と今井さん。バトル終了後は、持ち寄ったお菓子を食べながら雑談に花が咲く。誰かが持ってきたゲームで盛り上がることもあるとか。

『千葉県子ども読書の集い』で開催した出張ビブリオバトルの様子。5月11日イオンモール幕張新都心にて

 今井さんにとってビブリオカフェで大事なもう一つの柱は、「本をきっかけに、1人でも2人でも長南町を訪れてくれる人がいるといい。長南の魅力を伝えていきたい」ということ。町内のカフェでランチ付きビブリオバトルを開催したり、町内外のイベントで出張開催したりと、多くの人と本を通じた交流を深めている。東日本大震災の被災地を古本で支援する『チャリボン』にも力を入れる。岩手県陸前高田市内の津波到達地点に桜を植樹し後世に伝える活動をするNPO『桜ライン311』に、古本やCDなどの買取金額が寄付されるチャリティーだ。町内やイベント先で古本の寄付を受け入れている。

 次回開催は6月29日(土)13時半~16時、ちょうなん西小図書室にて。「カフェでくつろぐような感じで、時には脱線しながら、みんなでおしゃべりしています。気軽にお立ち寄りください」とのこと。参加費無料、申込不要。詳しくは問合せを。

 

問合せ:長南ビブリオカフェ実行委員会 今井さん

Tel.090・1044・5485

 

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