ふるさとビジター館 自然探訪~シオカラトンボの紫外線対策~

 近年、猛暑日が続き、熱中症で救急搬送されるニュースが連日ネットなどをにぎわせている。私たち人間は、クーラーや携帯扇風機、日焼け止めクリーム等、文明の利器で何とかしのいでいるが、生き物たちには文明の利器はあるはずもなく、生活スタイルの変化や体の構造でなんとかしのいでいる。

 夏の昆虫の代表、トンボの仲間の夏の対策を見てみよう。アキアカネは、避暑のため高原に集団で移動し、涼しくなった秋に平地に戻ってくることはよく知られている。30度以上での生存が困難のために生活スタイルを変化させているのだ。アキアカネほどではないが、多くのトンボは、水辺から離れ、木陰で過ごし、あまり動かない。水辺で陣を張るトンボも、太陽を背にして、腹をほぼ直立に突き立てている。直射日光を浴びる面積を減らす努力をしているのだ。

 一方紫外線対策をしっかりとって飛び回るトンボもいる。シオカラトンボが代表格だ。水辺で縄張りを張り、暑さお構いなしのように見えるが、実は、紫外線対策に対応した体になっている。白い粉を吹いていることから、シオカラトンボと言われているが、産業技術総合研究所の研究によると、その白いものは、実は紫外線を反射するワックスのようなものを体から出しているとのことだ。

 よく観察すると、オスは腹の上側がより白く、直射日光に浴びてもバンバン反射するが、メスはムギワラトンボと言われているように、オスほど白くない。それでも腹の下側が白い。これは、交尾でハート型を形成した際に、その部分への直射日光を反射させるために白くなっているとのことである。交尾の体型を考慮しての紫外線対策は恐れ入る。ハラビロトンボ、コフキトンボ等夏に白く粉を吹くトンボは、同じように紫外線対策をとっているようだ。

 人間が、UVカットの日焼け止めを塗るのと同じようなことだ。こういう事情を知ると、シオカラトンボにより愛着を感じる。
(ナチュラリストネット/岡嘉弘)

 

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