子どもたちを支える地域の力で150周年を~市原市立五井小学校 150周年実行委員会~【市原市】

【写真】五井小の歴史をたどるスライドショーの冒頭、紹介する子どもたち

 昨年と今年は、創立150周年を迎える小学校が多数ある。1872年の明治初期、近代教育制度の「学制」が発布され、国民すべてが初等教育を受けられるよう、全国各地に小学校が開校したためだ。市原市内では約10校が150周年を迎えている。五井小学校もそのうちの1校。記念誌を発行し、11月8日には全児童出席の記念式典を挙行した。企画・運営は、学校側も含め、五井小を支えてきた保護者や地域住民中心の150周年実行委員会が担ったという。

150周年を皆で祝う

創立150周年記念誌

 実行委員会は、今年1月、『準備委員会』として始動し、記念誌部と式典部に分かれ事業を行った。創立150周年記念誌はA4版、48ページ。『五井小のあゆみ』には明治から令和の年表だけでなく、その時々のエピソードがトピックとして取り上げられ、これまで五井小と長年関わってきたボランティアやPTAなどの団体を紹介。さらに五井小の歴史を感じられる『3世代作文』では、親子代々で五井小を卒業し、現在子どもが在学している9家族が、自分たちの五井小の思い出を寄せた。写真も多く、五井小卒業生なら、懐かしい記憶を呼び起こす冊子だ。

 記念式典は、150周年を迎える子どもたちに、その歴史に立ち会う瞬間を楽しんで欲しいという思いが込められた。来賓は約50名。小出譲治市原市長、藤谷誠市原市教育長ほか、五井小卒の相川真樹市議、歴代の校長やPTA会長など、五井小に関わりのあった人たちが招かれた。1部と2部に分かれ、全児童が出席し、1部では基本的な式だけでなく児童発表も行われた。子どもたちによる『五井小150年の歴史』の映像紹介はコミカルな寸劇仕立て、何名もの子どもたちが大きな声で参加した『今も昔も楽しい学校』宣言、さらに全員で『夢見るジャンプ』の大合唱。2部は子どもたちが楽しめるプログラムで、実行委員会では開式にあたり、「1部では記憶をめぐり、2部は子どもたちの記憶に残るよう、委員会、先生方、子どもたち、皆で企画しました」と挨拶。合唱部による手話付の『この星に生まれて』と、ゴスペル映画で有名な『Hail Holy Queen』の振り付きの歌が発表され、次は『お楽しみ公演』での木更津在住・大輝さんによるマジックショー。人が入れ替わったり消えたりする様々なイリュージョン・マジックは子どもたちを夢中にさせ、式典は楽しい雰囲気のまま終了した。

立役者は地域の力そのもの

合唱部の発表

 150周年実行委員会委員長の三枝弘昌さんは、五井小卒業生。渡辺和也校長から委員長を依頼されたのは昨年の夏頃だった。「父も祖父も五井小でしたので、これはやらねば、と思いました。それまでの3年はPTA会長だったので、委員会メンバーは元PTAの方たちを主に参加をお願いしました。準備にどんどん動いていく皆さんの熱意は、こちらが気圧されるほど凄かったです」と語る。渡辺校長も「記念誌の内容・デザインも、式典のプログラムも、皆さんの案から決まっていったもので、とにかく色々やっていただきました。教員は、原稿チェック、子どもたちの練習の指導、校内の準備を担当し、サポートもしましたが、やはり裏方の主役は実行委員を始めとした方々です。おかげで『五井小プライド』を表現した良い式典になり、子どもたちの明るく息の合った発表には、大切な事を感じてくれたのではないかと、涙が出るくらい感動しました」と話す。

 今年4月に着任した教頭は、150周年と聞いたとき「凄い年に当たった」と思ったという。「夏の暑い中、式典部の皆さんは、五井小の歴史を振り返るスライドショーの作成に、大量の昔の写真を確認し厳選。記念誌部では各資料を調べ、各方面の方々に依頼した原稿をまとめていきました。私も少し協力することもありましたが、時間の少ない中とても熱心にやっていただきました。式典は、2部の準備に追われて1部の子どもたちの発表を途中までしか見られなかったのですが、リハーサルから素晴らしかったので、本番は最高の出来だったと思っています」と話す。同じく昨年、五井小に赴任した教頭は、「身が引き締まる思いだった」と振り返る。「式典は最初、高学年のみ出席で、低学年は教室でリモート参加、という案もあったのですが、歴史的なことだから子どもたち全員に体験させたいという話になりました。子どもたちの元気な姿に、こうして歴史と伝統が引き継がれていくんだなと思い、全校児童が参加でき、とても良かったと実感しました。協力してくださる方々の五井小への愛も、たくさん感じた準備期間でもありました」と話した。

大輝さん(左)のマジックでは、三枝さんが助手に登場する場面も

「式典も記念誌も、地域の方々、五井小に縁のあった多くの方々の協力でできたもの」と三枝委員長も渡辺校長も揃って言う。「今回の事業では、何か手伝えることはないかと、多くの人に声がけをいただきました。地域の方々は、いつも子どもたちを見守っている。そうした地域の力が、五井小の伝統を支えてきたひとつだと、150周年に関わって改めて思いました」と三枝さん。五井小の正門には、150周年のテーマ『笑顔いっぱい 友達いっぱい 明るい五井小』が掲げられている。イメージキャラクター『ごいおん』とともに、昨年、子どもたちが校内で案を募って決めたそうだ。これらも今回行われた記念事業の記憶とともに、五井小の次の世代へと引き継がれていくメッセージになるに違いない。

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