旧老川小をメインステージに音楽の祭典が大成功

第1回養老渓谷音楽祭

 ゴールデンウィーク後半である5月4、5日の2日間をかけて、『第1回養老渓谷音楽祭』が開催された。舞台はもちろん新緑の養老渓谷。2013年春に廃校となった旧老川小学校をメインステージとして、サブ会場に旧会所分校と観光センターやまびこの2つを設置。各会場合わせて、約30のアーティストが出演、飲食とワークショップ合わせて28の店舗が出店を果たした。
 同音楽祭の発起人で、シンガーソングライターである小泉和弘さん(51)は開催へのきっかけを、「素晴らしい旧老川小学校を人々が集う場所にするための活用方法だった」と話す。「私は都内足立区出身で、ずっと音楽活動を続けていた。旧老川小の景観に引きつけられて移住を決意。子どもを通わせたかった」というから驚きだ。2003年にスローライフへの転身を機に大多喜へ移り住んだのもつかの間、2013年3月での閉校からは逃れられなかった。「わが子が入学した時点で新入生は4人。地元や卒業生の方も廃校の事実を悲しみながらも為すすべはなかった」というのは現状の少子化問題を顕著に表わしており、私たちはどこか仕方ないと思いがちなのも事実である。だが、小泉さんは違った。廃校となった翌月には小学校を貸し切り『桜まつり』、そして『夏休みフェスタ』を実施して子どもたちが遊びに来られるようにした。
 旧老川小学校は14年前に建て替えが行われている。違う学年が同時に授業をする複式学級を考慮してのことだったが、校舎はレトロで趣のあるものに生まれ変わった。吹き抜けのホールは日が差し込み明るく、各教室はすべてが木材でつくられぬくもりがある。4日は快晴だったが、5日は生憎の雨。音楽機材の関係で旧老川小学校内にはステージが3つも集合した。屋根のあるテントでひとつ、ホールでひとつ、教室でひとつ。あちこちから溢れだす音楽に、ショップを見ていても食事をしていても体を揺らす子どもたち。
「音楽祭に出演してくれたほとんどの方が、自主的に働いてくれている。そして、旧老川小を守りたいという意見に賛同してくれた人々」と小泉さん。この3年間、足がかりとなるように様々な音楽活動をしてきた。自身で作詞作曲した『大多喜町に花が咲く』、『子宝もみじの唄』などを含めた7曲を1枚にまとめた『養老渓谷音楽祭チャリティCD』を作成。他にも、「大多喜の町は昔からある伝統を守っているが、ある意味閉鎖的でもある。外から来た私は知り合いも少なく、ゼロからのスタート。友達を増やすことと、意見を隠さずにいうことを心がけた」という。徐々に仲間が増えた小泉さんの、いわばこの音楽祭は集大成といっても間違いではない。3カ所の会場を合わせた来場者数は延べ5千人にも上る。
 食では、勝浦タンタン麺やピザ、カレーライスなどの匂いが空腹を誘う。ワークショップではロウソクや羊毛フェルト作り。ビーズなどのアクセサリー販売から絵画が飾られていたりと多種に渡っていた。ステージでも『オヤジバンド』やヨーデル歌手の高らかな歌声、ソーラン節披露にジャズと幅広いスケール。出展者からも、「なにより会場が素敵なので第2回も楽しみにしています」、「音楽と音楽の合間にコントとかできれば、もっと幅が広がるかも。これからも続いてほしい」との声が聞かれた。山間の澄んだ空気に響く音が小学校を蘇らせた。
 小泉さんは、「本当はもっと地域の人と協力してやるべきなのかもしれない。私は不器用なので無茶なことをしたのかも。でも、やってよかったと思う」と校舎を眺めながら瞳を潤ませた。高齢化が進み、若手となる人材は旅館などやっていることが多く土日はイベントに参加できない。「それでも、観光センターやまびこでたけのこ販売をしてくれたのは地元の方。音楽にどう携わればいいか分からなくても、一緒に作り上げることは可能。今は少しそれが伝わって、スタートラインに立った段階」と続けた。
 今後は、「粟又の滝や出世観音など地元観光名所を使ってステージを作り、地域を巡りながら音楽を楽しめるような祭りを作りたい」と語る小泉さんだが、廃校となった小学校を使ってのイベントには卒業生や地元の人々には、なにより校舎が一番喜んだことだろう。ちなみに、旧老川小を借りることは可能だが申請が必要。大多喜町役場へお問い合わせを。

問合せ 小泉さん
TEL 080・2677・4649
http://youroukeikokuongakusai.jimdo.com

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