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お国自慢で見せたいものは、オーヤのヘーダと廻り松」 押日八幡神社の珍しい神事『親の日だ』と長者・中根地区の合同祭 十三社祭り
- 2014/10/24
- 外房版, シティライフ掲載記事
いすみ市岬町の中根地域で、200年以上前から続いている『中根六社祭り』。毎年、9月25日に開催されている。当日朝10時を過ぎると、集落にある押日八幡神社に続々と氏子の皆さんが集まってくる。近隣4社の神輿が参集すると、神社の南にある山王堰で『堰づつね』を行う。堰が崩れ落ちないようにと、堰の周りを各神社の神輿が順々に踏みしめるように駆け抜ける。その後、2社も参集。午後2時、御霊入れ式が執り行われ、いよいよ「奇祭」とも言われる珍しい神事、『親の日だ(オーヤのヘーダ)!』の始まりだ。この名称の由来については、町史によると、「親とは、椎木大宮神社から神輿をもらい受けたことから親神として崇拝し、宗(おや)の日に餅を買って供え物として上げるという意味」とある。また、神主の井上信幸さんは「先祖に対する感謝の祭り」とも話す。
押日八幡神社の境内は大勢の見物客が押し掛け、6基の神輿と担ぎ手たちの熱気に包まれる。まずは、にぎやかし。本社のまわりを神輿が3周する。そして、一社ずつ「人間やぐら」をつくり、そのてっぺんに2人の男衆がのぼり、日の丸の扇を振り、「オーヤのヘーダ!」と繰り返し叫ぶ。数人が肩と肩、手と手を取り合い組みながら輪をつくり、更にその輪の上に数人の男衆がのぼり、そこでまた輪を組みと三層の人の輪が出来上がる。氏子の話によると、「昔は鳶などの職人が多かったから、四層、五層とできたもんだ」とのこと。それでも、見上げるほどの「人間ピラミッド」である。氏子も見物客も大歓声、境内は興奮のるつぼと化す。
てっぺんの男衆がふらつくと、見物客から悲鳴が上がり、周りの氏子が必死に支える。それでも、やぐらが崩れ落ちると、次の神社がと、次々に妙技を披露。なんでも練習なしの本番一発勝負だそう。皆の気合いに感動した様子の見物客と、声をからして応援する子どもたち。いつ崩れ落ちるのかと、ドキドキヒヤヒヤしスリル満点ではあるが、崩れても落ちる前に皆の力で足から着地させる。たいしたものだ。関係者の話では、『親の日だ(オーヤのヘーダ)!』は押日神社でしか行われていない。他の神社で行うとケガ人が出ると言い伝えられているからである。実際に行った他社で大ケガをした人がいたとか。
『親の日だ(オーヤのヘーダ)!』のあとは2基ずつ神社前の田んぼの先にある松へと向かう。松の周りを神輿を差し上げつつ走る『廻り松』を終えると、東中滝神社で御霊抜き式を。ここで、六社祭りは終了。神輿は中根と長者の合同祭、十三社祭りが行われる長者町にある天神社へ。
十三社祭りが開かれる天神社には、長者小学校お祭りクラブ(長者囃子保存会)の子どもたちが揃い、同社の神輿は午後4時前から長者商店街を練り歩くパレードを行った。そして午後5時過ぎ、中根地区と長者地区の神輿が天神社の境内に勢揃い。神輿が境内を周るにぎやかしのあと、クライマックスとなる『大別れ』となる。日が沈み辺りが暗くなる頃、高張提灯に灯を入れた各神社の神輿が会場である近くの総合運動場へ向かう。花火の合図で神輿を捧げ、別れ歌で神輿を合わせる『大別れ』。闇夜の中、照明に照らされ浮かび上がる神輿の荘厳な美しさと、大勢の担ぎ手たちの躍動感ある動きに見物客は魅入られたよう。見る者を感動させた『大別れ』終了後、神輿は各神社に帰り宮入となった。今年、見られなかった人は、ぜひ来年はお見逃しなく!