女性の目線で森林整備山の中は宝物がいっぱい

さんぶ木楽会

 刈払機を始動させ、さっそうと杉林の下草刈りをする女性たち。主に東金市、山武市、芝山町の山林で活動する『さんぶ木楽会』の皆さんで、会員は16名。
 古くは江戸時代から農業と密接に関係する林業地として、また戦後の木材需要で繁栄した千葉県の林業。需要を見越して植えられたスギなどの針葉樹は、家庭燃料だった木炭や薪に代わりガスや電気が普及した事や、安価な輸入木材に押され、伐採しても採算が取れなくなってしまった。山武地域でも山林が放置された結果、サンブスギの幹が朽ちて溝ができる病気が発生し問題となっていた。そこで10年前、千葉県山武農林振興センターは林業を盛り立てる目的で、山に興味があったり、シイタケ栽培などの林産業に携わる女性に声をかけ、女性の視点で森林整備をする会を発足させた。どこからも援助がない全くの自主運営スタイルで、当時、初顔合わせの7名でのスタートだった。
 「私は山持ちではありませんが、たまたま家の近所にあった森林組合に30年間務め、林業技術の普及や後継者の育成指導を行う『指導林家』の資格を持っています。最近は林業女子なるものが流行っているようで、私同様、実体験の無い会員も多く、山が好きというだけで、東京から参加している会員もいます」と会長の斎藤ひろ子さん(68)。
 県内に林業を行う女性グループは他にもあるが、本格的にチェーンソーなど機材を使って山に入るのは珍しく、会員の半数が刈払機やチェーンソーの安全教育を受け、認定書を持っている。また合理的な林業経営をする専門家として、『林業師』の資格保有者もいるそうだ。
 山で間伐や下草刈りをするのは2月から3月。その他は間伐材を使った工芸品を作成し、森林関係の産業祭やイベントに出店している。「病気や大風で折れてしまう木が多いのですが、それを見てもったいないと思うのは女性だからこそ。お金を稼ごうとは思っていませんが、活動資金を得るため、間伐材で箸やコースター、カスタネットなどを作り販売しています。山に入るのが楽しくてしょうがありません。会の名前も気楽に木を楽しむ会で、木楽会としました」と前会長の手島さん。
 千葉のブランド木材サンブスギを使った箸は、一つ一つカンナで削り、仕上げは口に入っても安全なようにクルミの油を塗る。雑木で作るカスタネットも良い音になる木はどれかなど、試行錯誤しながらも作品作りに勤しんでいる。他にも天然樟脳の材料になるクスノキで防虫ブロック。刃当たりが良く、臭いが付きにくいイチョウのまな板など、季節ごと、また女性ならではの感性で、作品のアイデアは次から次と浮かんで来るそうだ。
 作品を販売するだけでなく、木の温もりを子ども達に知ってもらいたいと、イベント会場でクラフト教室を開催している。刃物を使うので指導は大変だが、毎回大盛況になり食事も取れないほど。子ども以上に母親が興味を示すことも多く、親子で楽しんでいる姿を見てやりがいは感じているというが、実際に山に入って枝打ちをするほうがずっと楽しいと会員らは話す。
 千葉県森林組合の管轄地や会員の知り合いの杉山を4年前から管理している。最初は得られる収入全部を会の活動資金にしていたが、運営が順調になり、現在では多少の日当が出るようになった。もったいなくて使えず、農林関係の研修に出かける時などの費用に当てている会員もいる。昨年12月には田無市にある東京大学の演習林に出かけ、樹木の成長過程を学んできた。こういった研修先も自分たちで決めているそうだ。
 山に入ると色々な食べ物が見つかる。春はワラビにゼンマイ、サンショウ、タラの芽。夏にかけてはウド、ミョウガ、キイチゴなど。秋にはアケビや自然薯、たくさんのキノコ類。キクラゲはいつでも採れるし、店頭では想像がつかない茶色で茎の部分がビロードのようなエノキダケも自生しているそうだ。取材当日、年を越してちょっと乾燥したヒラタケを会員が見つけた。水に浸けておくと戻るので、炊き込みご飯やバター炒めにすると美味しいとのこと。「きちんと管理された山は食べ物だらけ。大震災があっても生きていけます。全国的にも林業が衰退している現在。今こそ山の豊かさ、管理する大切さを広く知らせる事が大事だと思っています」
 会の活動を充実させるため、昨年から準会員として4人の男性が加入し、作業をサポートしている。山の楽しさを広める伝道師として一緒に活動する女性を募集中。入会資格は山に興味があれば誰でもOK。活動日は主に週末で、都合の良い時だけの参加で、1~2カ月に1度のペース。また「任せてもらえる現場があれば枝打ち、下草刈り、間伐など致します。お代は活動資金として多少いただきます」との事。

問合せ 斎藤ひろ子さん
TEL 090・1666・5380

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