作品で自分を表現、国内外展覧会で数多くの受賞作「とうがね近江びな」作家が個展開催

東金芸術の森 主宰 松本 展し さん

 四季折々、見事な花を咲かせる木々に囲まれたアトリエ。奥に進むと現れる陶芸の窯、一面の緑に隠れるように広がる露天風呂。美しい静寂のなかで一瞬、日常を忘れる感覚を味わう。
 この「東金芸術の森」(東金市上谷)の主は、松本展しさん。日本美術家連盟会員で、現代美術家協会委員も務めた立体造形作家である。「東金を元気にしたい!」と今年1月~3月、東金に縁のある近江の局(徳川四代目将軍家綱の乳母)をモチーフとした『第1回とうがね陶びな祭り』を企画・実施し好評を博したのは記憶に新しい。
 「小さい頃から表現することが好きだった」という松本さんが、芸術の世界への思いを強くしていったのは多感な高校生の時代に遡る。「その頃、周囲の自己顕示欲の強い大人に接して、不快感を覚えたんです。そして、私はそういうふうにはなりたくないな、でも自己顕示欲は人間誰でもあるものだし、と考えた時、行動や言葉でなく『作品で』自分というものを表現すればいいのだと。その表現が芸術として人の心を動かすことで、嫌味な人間と思われるどころか、逆に周囲に大切にされ、それでまた自分も伸びるのではと、表現することに夢中になっていきました」
 茨城県出身。美術大学の油絵科を卒業し、「これからは立体の時代になる」と、立体造形の分野に自らの作品の幅を広げた。もっとも、結婚を機に「子育ては後からできない」と「奥さん&母親業中心」の生活へ。それでも、作品作りへの情熱は冷めることはなく、一男一女の成長とともに、自宅で絵画教室を開きながら、少しずつ創作活動を再開していく。
 「いざ結婚すると、男の人って妻を家庭にしばっておきたいと思うんでしょう。絵を描いていてバカにされたこともあったけれど、何を言われても続けました。家庭の仕事をしっかりやった上で。そうして、長く続けるとやがて相手が諦める。さらに続けて、作品が入賞すると今度は協力体制になるんですね。だから、とにかくそこまで続けることです。諦めず、いくつになっても、1つの夢に向け真摯に取り組むことで必ず道は開けます」。妻・母としての役割を全うし、幕張の自宅を長男に譲って現在の地に住まいを移したのは16年程前のこと。静かな環境での本格的な創作再開である。
 ちょうどその頃、展覧会に出展した立体造形『世紀末』で松本さんは転機を迎える。「湾岸戦争で石油の海と化した波打ち際に、油にまみれた真っ黒な水鳥が立つ映像を見て、強い衝撃を受けました。『世紀末』は、命の尊さ、小さなアリにだって命があるということを『巨大化したアリの骸骨』という形で表したんです」
 同作品は現代美術家協会の展覧会で初入選。その後も「あれよあれよという間に色々なお話をいただき」、次々と国内外の展覧会・個展に出展。徐悲鴻記念館館長賞(中国、平成14年)、ハプスブルク宮廷記念芸術双鷲賞(ウィーン、平成15年)、現展会員賞(平成15年)、アルゼンチン文化功労章(アルゼンチン国会、平成16年)、損保ジャパン美術財団奨励賞(現展、平成19年)、陶美会連盟展大賞(平成24年)等々、多くの受賞を果たした。
 また、東金市の姉妹都市・仏マルメゾン市からの訪問団に昨年、「近江びな」をプレゼント。「とても喜んでいただきマルメゾン市長室に飾られているとのことで、それがきっかけで、フランスで個展を開催する計画が進んでいます」。
 代表を務める異業種交流会「チームとうがね」のメンバー、弟子たちと目下、フランスツアーの準備を進めている最中だという松本さんは、「自分ひとりだけでなく、仲間と一緒に伸びていきたい」と語る。
 6月23日(金)~7月6日(木)、「サンライズ九十九里」1階ロビーにて、『松本展し 空間を彩る展』と題し、個展を開催。知人が営む佐瀬農園が品種改良した「摩訶不思議なトルコキキョウ」を立体造形作品にからめ、生花と花器、とうがね近江びな、オブジェ等による展しワールドが繰り広げられる。
 「よく年齢不詳って言われるんですけど、たぶん、みなさんが思っているより歳上かしら。歳を聞かれたら、私は正体不明の宇宙人よって言ってるわ」といたずらっぽく笑う松本さん。美しく、気品ある作品を生み出す作家は、お洒落講座を開いたりなど「美意識は常に高く持つ」ことをモットーとし、凛としたその姿で言い放つ。「老いは自己責任よ」

問合せ 東金芸術の森
TEL 0475・52・0657

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