地道な作業で花いっぱいの里山再生

養老渓谷ふる里を守る会

 地域人口の減少、更には観光客の伸び悩みなどの環境変化に柔軟に対応できる人材を育成しようと、平成13年、大多喜町は人材育成研究会を発足させた。町内に参加を呼びかけ、それに応じた老川地区の有志が勉強会や視察研修を行っていたが、3年ほど経った頃、自分たちで地域のためになることをしたいと、賛同者42人で『養老渓谷ふる里を守る会』(現 岡本敏男会長)をスタートさせた。
 老川地区は奥養老と言われ、粟又の滝や水月寺などの名所があり、特に紅葉の時期は観光客が多い地域。しかし少子化や住民の高齢化に伴い、耕作できなくなった田畑や放棄地が多くなり、観光地として賑わっていた頃の景観が保てなくなっていた。そこで会員らはこの素晴らしい養老渓谷の自然を守り、訪れる観光客が楽しめるような活動をしようと、複数の地主から無償で借り受けた土地を整備し、合わせて5ヘクタールの土地を花がいっぱいの公園にする計画をたてた。
 「まず荒れ放題の土地の草刈りや木々の伐採をしなければならなかったのですが、最初は草刈り機やチェーンソーなど扱ったことがない会員ばかり。斜度がある土地も多く、慣れない作業で効率も悪かったです。また篠竹は夏に刈ると次の年には生えてこないというので、一番暑い時期に作業するなど過酷でした」と副会長の野口要一さん。
 発足から16年が経った現在、世代交代もあり会員数は女性2人を含む34人。30代から60代の会社員、公務員、自営業、農業などの様々な職業の人が集まっており、勤めていても自営業者でも参加しやすいようにと、平日と日曜日の月2回の活動を行っている。臨時作業は随時で、都合がよい時に活動するのは個人の勝手だそうだ。「それぞれ得意分野があり、作業内容で指導者が変わります。作業中や休憩時間に年配者から若手に経験談やうんちくが話される事がありますが、蜂はペットボトルに酒と酢、砂糖を入れて設置すると面白いほど捕獲されるなど、先人の知恵が確実に伝授されています」と会員。
 養老渓谷には車で来る人が多く、道路脇には季節の花を植えたプランターを置くことにし、年2回の植え替えや管理を行っている。また整地した土地の一部を、誰でも無料で利用できる駐車場にし、周りには紅葉の時期以外でも楽しめるようにと桜や梅の木も植えた。そして町や企業など複数の団体から苗木や球根を提供してもらい、ツツジ、モミジ、アジサイ、菜の花やレンゲ、スイセンを植えた。特に力を入れているのはスイセンで、形や開花時期が違う6種類が植えられた『すいせん畑』には多くの人が訪れる名所となっている。山間なので千葉県の一般的な花の開花時期より2カ月くらいは遅くなるようで、スイセンも4月に入ってからが盛りとなる。
 次世代を育てる意味もあり5年前、地元の保育園に通う子ども達と6千球のスイセンを植えたことがあった。土に触れることに子ども達は大喜びだったが、意外にも一緒に参加した保護者や保育士らがこの作業を楽しんでいた様子だったという。その後、地道に株分けを繰り返し、現在の株数はおよそ2万株。道路脇に広がるすいせん畑は、観光客だけでなく地元住民の目も楽しませている。ほぼ1年を通して、草刈りや植え付け作業といった地道な活動ばかりで、現状維持がやっとだが、住民の感謝や励ましの言葉が喜びとなっているという。
 平成18年に嬉しい発見があった。一時は絶滅したと考えられ、現在でも千葉県の極めて限られた場所にしか生息しない希少種のゲンゴロウ『シャープゲンゴロウモドキ』が老川地区内で見つかったのだ。「生息地の草刈りや清掃といった保護活動のお手伝いくらいしか出来ませんが、環境整備に力が入ります。ゲンゴロウの住みやすい環境を増やし、もっと生息地を広げられたらいいなと思っています」と会員。
 少しずつだが確実に里山の風情が戻ってきているようだが、シカやサル、イノシシが増え、花の芽などが食害を受ける問題も出てきた。昨年12月には会の管理する、すいせん畑もイノシシに掘り起こされ、球根を植え直したという。電気柵を張るなどの対策をしているが、今後は本格的な害獣対策も視野に入れた活動を考えなければならないようだ。多くの問題はあるにせよ、将来は観光客だけでなく移住者も増えるような住みやすい里山にするのが目標。活動は一般の参加も可能との事。

問合せ 養老渓谷ふる里を守る会事務局 太田政美さん
TEL 0470・85・0006

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