日本各地の郷土料理、 世界の料理を給食で!

栄養士 神事 真規子 さん

 勝浦タンタンメン、サンマご飯やずんだもち、ムケッカ(ブラジル料理)、ラクサーヌードル(シンガポール料理)、ロコモコ丼(ハワイ)…。これ、みんな給食のメニュー。「ランチルームを見渡すと、初めて見る料理に最初は抵抗がある子も。そんな顔を見たら『これどう?』と料理の説明をして『ひと口食べてみて』と勧めます。味覚形成以前に嫌いにさせてはダメだけど、味覚は変わっていくものだし、いろいろな味を知っている方が人生楽しいでしょ」と笑うのは、長生郡一宮町在住の栄養士・神事真規子さん(37)。
 給食を自校で調理し提供する長生郡長生村の職員として、昨年3月までの2年間を一松小学校、4月から長生中学校の給食の献立づくりを担当している。「食べることが大好きな家族で、子どもの頃はキャンプをしながらあちこちの美味しいものを食べる旅をしていた」という神事さんが学校給食の現場に入ってまず感じたことは、現代の子どもたちの「食」に対する関心の低さ。「それに違和感があって…、食べることは楽しいよ、全国にはみんなが知らないおいしい食べ物がたくさんあるよ、ってことを知ってほしい。目新しいものを出せば興味を持ってもらえるかな、と思ったんですよね」。そこで、月に1回、『郷土料理』の日として全国ご当地メニューを、さらには世界の料理も加えることとした。「子どもたちの心を揺さぶりたい」と神事さんは真っすぐ言う。
 自宅では試行錯誤の毎日。「レシピを探り、給食に落とし込むための試作を繰り返します。生ものなど、給食で使えない材料も少なくないので、その代替品として適した材料は何か、また、予算が決まっている中で何が作れるか。辛さの調節も大事で、例えば勝浦タンタンメンは最初に低学年にサーブして、学年が上がるにつれラー油の量を増やしたり」。ちなみに、一食当たりの予算は、小学生270円、中学生300円。それを年間の数字に置き換えて、「使う時は使い」、その分、コストを抑えられるメニューの日を設けているという。
 実は180㎝超の長身で、元バスケットボール選手の神事さん。出身地の三重県で小学校5年生からバスケットボールを始め、バスケの名門・桜花学園高校(愛知県)に進学して寮生活。その後、社会人バスケ(大和証券、三菱電機)の選手として7年間活躍した。
 「日々、プレッシャーの連続でした。試合に出られるかというチーム内の争いに加え、試合に出れば、結果をださなければいけないという思い。週に1日、1時間だけ会社に出勤して、あとは朝から夜まで練習やミーティング。土日も試合があることが多い。バスケットをやめるまで、まったく自由を知らずに生きてきました」。
 そして今、畑違いの栄養士に。それは、貧血に悩まされていた中高生時代、自らが栄養士にお世話になった経験からだ。
 「30歳で退職して、一回り下に混じって、短大(女子栄養大学短期大学部)に通いました(笑)」。27歳で結婚したご主人の転勤で千葉県に引越し、委託給食の会社で病院・介護施設勤務、茂原市の臨時職員として保健センター勤務(料理教室や運動教室、栄養指導)、現在の学校給食と、これまで栄養士として様々な分野の経験を積んできた。この間、ご主人は國學院大學の准教授として単身で仕事に打ち込む。「野球のピッチングの研究をしている彼の探求心は物凄くて、食事も忘れるほど。とても勝てないなぁと尊敬しています」
 そんな神事さんのライフワークの1つともいえるのが、東日本大震災(2011年)被災地でバスケットボール支援活動である。「ツイッターで呼びかけて集めたボールやシューズをトラックに乗せて、震災の2カ月後にはじめて訪問。この活動をSNSで知った和歌山のバスケットボールチームの方が練習試合に募金箱を設置して下さり、『バスケットをしている子どもたちに有効に使って欲しい』と私にお金を託してくれたこともありました。今も子どもたちに会いに定期的に訪れています」
 その際、地元のスポーツショップ再建を願い、神事さんがデザインをあげ「同店においてリストバンドの製作・販売をしていただいています。宮城県の子どもたち、全国の応援者が同じリストバンドをつけることで思いを共有してほしいと願い制作。『みんなの心をバスケットボールでつなぐ』という意味で『Ligar Heart(リガール・ハート)』と命名しました」
 宮城県の『郷土料理』の日の給食メニューは、サンマご飯とずんだもち。サンマを揚げて甘辛ダレに絡めてご飯に混ぜたサンマご飯は大好評で、給食を食べる子どもたちに神事さんは、宮城で美味しいサンマが獲れることと併せ、震災のこと、被災地の様子を伝える。「食を通じて、色々なことを知り、興味を広げてほしいと思っています」
 一番うれしいのは、児童からレシピを求められる時だという。「『今日の給食美味しかったから家でもつくりたい』と。給食って、一日の三食のうちの一食でしかないし、結局、家庭での食生活が大きく影響する。気に入ったレシピがあれば伝え、食べる楽しみ、日本や世界各地の食の伝統の素晴らしさをみんなが感じてくれるとうれしいです」。楽しくて美味しい。食べることの好きな元アスリートが、給食のイメージを覆した。

問合せ Ligar Heart
http://ligarheart.jp/

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