房総の小江戸によみがえる 土蔵造りの商家『釜屋』【大多喜町】

稲荷の祠

 大多喜町久保の城下町通りにある『釜屋(旧江澤邸)』は、明治9年(1 876年)建築の土蔵造りの商家だ。瓦屋根にどっしりとした構えの町屋で、2階には重厚な観音開きの扉が開いている。平成18年に大多喜町へ寄贈され、今年3月には改修工事が終了し、6月から一般公開されている。「かなり老朽化が進んでいたので、建築当時の姿をできるだけ残す形で改修が行われました」と、大多喜町商工観光課の担当者は説明する。
 火事の多かった江戸時代、耐火に優れた土蔵造りの町屋は江戸幕府から防火建築として推奨され、幕末以降普及した。「2階の屋根に味噌の入ったカメを置いておき、火事の時には扉を閉めてその溝に味噌を塗り込んで防火したと言います」と話すのは、大多喜町観光協会事務局長の高橋謙周(けんしゅう)さん。そのカメは今も同じ場所に見ることができる。

襖絵

商い資料館・帳場

 釜屋の家業は、当初は質屋、後に金物屋。1階は、帳場が置かれ商用に使われていた。土間を挟んで2つの座敷があり、中央にはケヤキの太い大黒柱が存在感を示している。入口のガラス戸の内側に、上げ下ろしする板戸もそのまま残され、障子の組子の模様も細やかで美しい。2階は、二間続きの蔵座敷。「ここは賓客のもてなしの間でした。窓からは大多喜城を望むことができます」と、高橋さん。欄間は表裏両面に彫刻が施され、鶴や亀などの縁起物の絵柄が見事に浮かび上がる。柱の釘隠しにも鶴があしらわれている。襖や天袋の小襖の引き手は、鳥が遊んでいたり、草木の模様があったりと一枚ごとにデザインが異なり、見比べるのも楽しい。内装の隅々まで趣向が凝らされており、当時の繁栄ぶりがうかがえる。また、敷地内に祀られている稲荷の祠(ほこら)も、もう1つのみどころ。龍など他に類を見ないほどの意匠がこらされていて、立派なものだ。傍らに立つ石灯籠も、笠の上には猿の親子、足もとには3匹の犬が彫られている。

(左から)商工観光課・浅野さん、観光協会・和泉さん、高橋さん

 城下町通りの同じ並びにある『商い資料館』は、同じく土蔵造りの商家を改修した建物で、当時の暮らしを伝える道具の数々が展示され、帳場も再現されている。『釜屋』と併せて訪れれば、更に歴史を肌で感じることができるだろう。今年度から『釜屋』と『商い資料館』の運営管理を行っている観光協会では、両施設を活用して手作り甲冑の展示や、お茶会や琴の演奏会などを予定。釜屋は通年で夜8時までライトアップされている。是非、小江戸の散策に出かけてみてはいかがだろう。

●『釜屋』『商い資料館』 入館無料
年中無休(年末年始12/29~1/3を除く)
3~10月:9~17時、11~2月:9~16時
問合せ:大多喜町観光協会
Tel.0470-80-1146

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