どこかにいそうな不思議な住人たちの世界 人形作家 本田 美枝子 さん【外房】

 睦沢町の田園風景のなかに建つ、ギャラリー801。様々な分野の作家が作品を出している常設展と、毎月3週間ほど開催される企画展を行っている。今月は、人形作家・本田美枝子さんの『妖精たちとの出会い』を4月25日まで開催中。擬人化された動物、妖精、魔女、ピエロなどの人形のほか、ヨーロッパの町を思わせる小道具や建物を作りこんだ作品、タイル絵などの小品も並ぶ。本田さんは「建物などは木材で、人形の衣装に使った布やレースは昔のもの。人形の顔や手足は樹脂粘土で作っていますが、それ以外は自然素材を組み合わせることに惹かれますね」と話す。

魔女の買い出し

 本田さんの人物作品は、お年寄りが多い。魔女も貴婦人もピエロも、どこかにいそうな人物で、表情も様々。「特に上品なおばあさんが好き。お年寄りは顔に味が出るので、よく作ります」。一方、動物作品はネコやカエルが中心。特に公募展用に制作した『ネコの夜会・ベニス』は大作だ。川をはさんで音楽隊のネコ、観客のネコたちが、夜の街に集う立体的風景を作った。小さなたくさんのネコたちは柄も表情もポーズも違い、目などは針で描いたという。また、松山庭園美術館の猫展に出品し、受賞した『ネコのお雛様の大行列』も不思議でユニーク。お雛様の七段飾りが動いたらどうなるか?という発想で作ったそうだ。「行列の従者が持っている小道具は、実際の古いお雛様で飾られていたものです。新しい人工的な生地や品はしっくりこないので、できるだけ自然な、古いものを使います。年月が経つと素材にも味わいが出ますから、古具や古布では風合いが増すんですね」

ネコの夜会・ベニス(部分)

 本田さんがこの道に進んだきっかけは大学受験。「子どもの頃から勉強が好きで、芸術的なことはしていませんでした。けれど、受験を失敗したことでこれからはグラフィックデザイナーがいいと思い、専門学校に進んで、広告代理店に就職。仕事で人形作家さんと出会い、これがやりたい!と思って弟子入りしました」。数年後には独立、大手おもちゃメーカーのぬいぐるみデザインを主に手がけた。結婚、子育てで一度やめたが、「知人から展示会への出品に誘われ、今度は自分の作りたいものを作ろうと、人形作家として本格的に始めました」

本田さん

 70歳になり、作家活動も20年以上経ったが、「表現したい、作りたいものがたくさんある」と話す。好奇心も旺盛で、作品のヒントにと、いろいろな物語やアニメ・ゲームなどのコンテンツも調べるという。千葉市土気の自宅にはアトリエがあり、畑での野菜作りにも忙しい。「田舎暮らしで農業をし、人形を作るというのが、東京にいた頃からの夢でした。子どもが小さい時にこちらに越してきて、買った土地を自分で開墾して畑にして。今はその夢が全部叶っていますね」
 緑豊かな森の中、野菜や花を育て暮らしていることが、本田さんの作品に息づく、不思議な実在感の理由かもしれない。昔から精霊も魔女も妖怪も、自然のなかに存在している。「人ならざるものがテーマですが、その中に人を表現したい。あちらの世界からこちらの世界に出てきたような、向こうの世界を垣間見るように、もっともっと深く表現できたらと思います」と本田さんは笑顔で語った。

会期:4/25(日)迄 
   10~17時、最終日15時 (火)(水)休
   ギャラリー801(長生郡睦沢町川島80の1)
   Tel.0475・40・3035

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