連載No.75 新旧
- 2013/2/1
- 市原版

時間が過ぎるのも、時代の移り変わりも、早い。知らない横文字が年々増えていくし、思い出の飲食店は、今は駐車場になってしまいました。
久しぶりに集まった友人たちとの宴席で、携帯電話の話になりました。新旧の変化が著しい携帯電話、「どの機種を使ってる?」せーので、テーブルの上に各自の携帯電話を出しました。傷だらけの5年前の物や、7年前の分厚いもの…、僕は僕で、4年前のもの。「物もちがいいな、みんな」全員が笑いました。いわゆる『スマートフォン』は一人も持っていない。「なくても済むから」弁護士の友人が言いました。
そうだよね、『最新』が『最善』とは限らないよね。各自のニーズに合っていれば。彼らは皆マイペースで、最新の電子機器に頓着しない性格で、物もちもいいし、友人も恋人も大切にする。新製品がわんこそばみたいに継ぎ足しされる世の中で、「買え買え」と急かされていた気持ちが、少し楽になりました。
その場にいたストリートダンス講師の友人が、自慢の長髪を掻き上げ、ズボンの左右のポケットから2個の携帯電話を取り出しました。古くてボロボロの、10年以上前のものと8年前のもの。「1個が壊れて通話相手の声が聞こえなくなっちゃってさあ、もう1個買い足したんだ」彼はのんびり屋です。「壊れたほうに電話が来たらどうすんの?」皆が聞くと、「そういう時は、『もう1個の携帯にかけて』って言う」買い換えなさい!さすがに皆が口を揃えました。
酒に飲まれて帰った夜。明かりを点けると僕の部屋の中は、捨てていない不要品で溢れています。物もちが良いな、ふふん、いや、新旧の『切り替えが遅い』だけか。僕は慌てて今年最初の大掃除を始め、散らかして、そのまま椅子にもたれ、眠りの海に沈んで行きました。
☆山口高弘 1981年市原生まれ。小学校4年秋から1年半、毎週、千葉日報紙上で父の随筆イラストを担当し、本紙では97年3月からイラストを掲載、06年から本連載を開始。「小さな事を大きく喜んで、楽しく伝え続けたいと思っております。今年もよろしくお願いいたします」
文と絵:山口高弘
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