『にっぽんの手わざ展2018』開催 技の伝承と匠の美を堪能

大谷家具製作所(長生郡長南町)

 6月2日(土)から10日(日)(10~18時)まで、大谷家具製作所(長生郡長南町1280-1)の工房2階にあるギャラリーにて、初夏の特別工芸展『にっぽんの手わざ展』が開催される。会期中無休。
 同ギャラリーでの出展は二度目である市原市在住の千葉県指定伝統的工芸品に認定された竹職人・八木澤祐三さん(88)、初出展となる千葉市在住・皮革職人の中川守和さん(71)、同じく初出展の神奈川県在住・箒職人の山田次郎さん(82)と若手職人6名の作品が展示販売される。
 会期中の(土)・(日)は実演あり。3、4日は箒職人・遠山さん、9、10日は小林さん、4、9、10日は竹職人の八木澤さん。
 皮革職人の中川さんは高校卒業後、大手皮革業界の会社に就職し、40代で独立。およそ50年、皮革製品を作り続けている。約30年前から横浜元町に本社を置くハンドバッグの老舗メーカーや甲州に400年以上も伝わる革工芸の老舗メーカーの財布などの製作を請け負っている。
 がまぐちの口金を得意と自負する中川さん。数年前、千葉市に店舗兼工房を構え、がまぐちの他、長財布、名刺入れ、パス入れ等をはじめ、「大人の遊び心を発揮して」と、ご朱印帳入れのバッグ、ハンコ入れ等も製作。
 今後は更にオリジナルに力を入れたいとのこと。
 永年、有名ブランドの下請け職人として、多い時には10人以上の職人を抱えていた中川さん。現在は娘の明穂さんなど数名の女性も製作に加わり、若い感性によるアイディアで商品開発が試みられている。
 通常、製作に使うのは牛革だが、カエルやトカゲ、エイなど珍しい皮革をストックしている中川さん。将来、個人博物館ギャラリーを設け展示するのが夢だとか。今回の展示会での在廊日は2、3、10日。

 
 箒職人の山田さんは、神奈川県愛甲郡愛川町中津地区で、明治から昭和にかけて同地区の名産品だった箒を製作している。中津のほうきは、掃除機の普及で一度は途絶えてしまったが、箒づくりを復活させるため生家が製造卸だった柳川直子さんが『まちづくり山上』という会社を立ち上げ、職人たちに呼びかけ蘇らせた。自宅の蔵を改装し箒博物館『市民蔵常右衛門』もオープンさせた。 
 環境エコや節電意識の高まりと共に、中津箒の人気も急上昇。「持ち運びしやすく置き場所もとらない」、「静かに掃除できる」などの反響も。
 また、イネ科の植物を編み込んで作る中津箒は、植物の油分が畳やフローリングにツヤを出す効果もあるとか。職人が丹精込めて作る暮らしの道具。この機会に見直してみては。 
 6月3日(11時~・14時~)、柳川さんによる箒のお話し会を開催。内容は箒の歴史や箒づくりの大変さ、豆知識など。質疑応答あり。9日には体験会『職人さんと一緒に小さな箒を作ってみよう』を開催。事前予約で約15名。

職人の美意識に触れる

 竹職人の八木澤さんは今回も「伝統工芸の逸品」ともいえる美しい花籠や茶筥などの竹細工作品約20点出展。日用品レベルの竹細工を作る人は多いが、工芸品レベルの作品は少ない。近代美術工芸を確立したといわれる八木澤さんの作品について、ギャラリーの大谷悦子さんは「様々な竹編みの技法を使い、丁寧な手仕事が繊細で美しい造形美を表現していると思います」と話す。
 市原刑務所で長期に渡り、受刑者に竹細工指導を続けてきた八木澤さん。昨年まで都内のデパートで20年以上、個展を開催してきた。「最後の個展では、かつて竹細工を教えた元受刑者の人たちが来てくれた。これまでの個展を振り返ると、長い間、ある花器を見つめていた方が、クラシックを聴いているようだと言ってくれたこともあった。また、『あなたの笑顔が好き』だといって、会期中に何度も来てくれたある方は、病気で亡くなる直前に電話をかけてきて『声が聞けてよかった。嬉しい』と言われたことも」と語る。そして、「自分の想いを表現したいと、常にもがいている」と製作意欲は今も衰えることを知らない。 
 会場は気軽に立ち寄れる雰囲気でリピーターが多いのも頷ける。是非、お出かけしてみて。

問合せ 大谷家具製作所
TEL 0475・47・3530

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