日本の伝統食 味噌づくりを楽しむ

日本の伝統食 味噌づくりを楽しむ

 大豆、麹、塩とシンプルな素材を使い、じっくりと熟成させる味噌。大豆の持つ良質なたんぱく質や食物繊維に加え、麹の出す酵素の働きでできる必須アミノ酸やビタミンを豊富に含む発酵食品である。その栄養価は古くから知られ、かつては各家庭でつくられてきた。市販品が簡単に手に入る現代でも手づくり教室は人気があり、ひと冬に何度も開催する公共施設があるほど。同じような材料を使っても気候、保存場所や熟成期間によって仕上がりに違いが出る味噌づくり。異なる講師によって開かれた3教室を取材した。
 戸田コミュニティセンター主催で開かれたのは『レッツゴー手マイ味噌作り』。講師の赤石匠司さん(32)は市原市南岩崎の赤石味噌糀店の4代目、大学院で発酵食品の研究をしたという本格派。1月30日、大釜で8時間煮た大粒の北海道産大豆と自家米の麹を持ち込んで「昔ながらの懐かしい味」を伝授した。
 材料は大豆1キロ、麹1キロ、塩500グラム。まず、参加した16人は塩きり麹を準備した。ビニール袋に入れたのは、ほぐした麹と塩。よく振り、均一に混ぜるのが大切。別のビニール袋で煮大豆をペースト状にしたあと、塩きり麹と種水を加え素手で混ぜた。調理室に大豆の香りが立ち始めると参加者の額にはじっとりと汗。頼もしい男性陣が難儀する女性の分も手伝いほどよい固さにこねた。空気を抜くためソフトボール大の味噌玉を作り、打ち付けるように桶へ。軽く塩をまぶし、ラップを密着させ「家で焼酎などの食用アルコールで容器の汚れをふき、重石をのせ蓋をする。適温20度。カビは取り除く」とのこと。蒸し暑い夏を越したら天地返し。それから1カ月以上たてば食べられる。「熟成が進むと風味と旨味が増し、色が濃くなる」そうだ。
 加茂公民館主催で開催されたのは『ふるさとの保存食―自家製みそ造り』。2月8日、食生活改善推進委員の渡邉すみ江さん(59)が「台所で簡単にできる方法」を教えた。大豆2キロ、麹3キロ、塩900グラムは「麹の甘みを生かし、塩分が少なめでも保存がきく健康に配慮した割合」だとか。大豆は地元農家、麹は赤石味噌糀店から購入。事前に2時間半煮たという大豆をフードプロセッサーで数回にわけ潰し、手でよくすり混ぜた塩切り麹に加えた。種水は煮汁。
 参加者20人が各調理台に分かれ、大きなボールひとつを囲んでこねると昔は「戸外で薪を燃やし大釜で煮た」、「足で踏んだ」、「近所の人と力をあわせた」と会話が弾む。「家の米を専門店に頼み麹にしてもらう」、「家庭菜園で大豆から栽培する」というベテランが多く、「昨年、数カ所の味噌づくり教室に参加した」という島野在住の女性もいた。渡邉さんによると「桶に入れたら、消毒した大きめのサラシ、ラップの順に敷き、重石として1キロの塩を均一に置く。天地返しはしてもしなくてもよい」とのこと。味噌づくりを初めて体験した40代の女性は「この方法なら子どもと楽しめそう」とできた味噌玉を分けあい嬉しそうに持ち帰った。
 市津公民館主催は『男の料理』(全5回)最終回で『味噌造り』を企画。2月20日、農協の市津農産加工部会の伊場美津子さんと弓削田恵子さんが「自分一人でできるように」と指導した。使用したのは市原市瀬又産の大豆1キロと麹1・3キロ、それに塩400グラム。
 一昼夜水につけた大豆を2回に分けて圧力鍋で煮るところからスタート。蒸気が噴き出したり、タイマー音が響くなか料理好きの参加男性14人は慣れない圧力鍋に積極的に挑戦した。柔らかく煮上がった大豆を潰したのは『手マイ味噌作り』同様ビニール袋を利用して手やビール瓶で。フードプロセッサーも用意されたが、さすがに使う人はいなかった。塩きり麹と塩分8%の種水を混ぜ、最後に塩をこすり付けた容器に仕込んだ。伊場さんの注意ポイントは「調理器具、保存容器に水分を付けない。空気に触れさせないこと」。重石は塩300グラム。
 各教室で必ず話題になったのは『とうぞ』または『とうぞう』と呼ばれる市原とその周辺の郷土食。大豆を煮て残った汁に麹と塩を加え、煮大豆や納豆を入れ、しばらく寝かせるとできる。「親指ほどの太さの干し大根を刻んでいれた」、「北海道出身の妻には受けない」などと楽しそうに話し、煮汁を持ち帰る人もいた。
 味噌は使う麹によって米味噌、麦味噌、豆味噌に大別される。麦偏の『麹』は中国からきた漢字、米に花の『糀』は日本の国字。どちらも同じ『こうじ』を指す。

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