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山間に咲く薄紅色のシモツケ

 山間の道を車で通り過ぎる景色の中に薄紅色の花が目に入る季節がやってきた。そこは車の往来が多い坂道の途中にあり、路上駐車がはばかれる場所であった。ある年、事故が起きないように車を止めるスペースが見つかり、歩いて戻り、ゆっくり眺めてみた。シモツケ(下野)という夏の花であった。それからはこの花を見るたびに「夏が始まったなあ!」と感じ入るようになった。
 大きくても高さ1メートル程度の落葉低木で、日当たりのよい斜面に多く見られる。人が分け入る腰の高さぐらいのところに、一斉に咲き始め、8月ぐらいまで咲き続ける。細い枝先に多数の花を半球形につける散房花序という姿は、花の重みで倒れそうだ。一つ一つの花は大きさ5ミリぐらいの5弁で、色は、淡紅色、紅色、濃紅色と色々ある。葉は互生、先がとがった卵形の単葉は大きさ5センチぐらい、縁に鋸歯がある。シモツケソウ(下野草)という野草に似ているからなのか、別名をキシモツケと云う。シモツケソウの場合、花は紅色で、葉は複葉。
 市原の中部は斜面を切り開いた道が多い。曲がりくねった道や狭い道もあり、交通事故を起こしかねないので、景色に魅入る余裕などない。それでも一斉に咲き始める山の木々は、その色合いが春とは違う雰囲気をかもしだす。いやな暑さを思い起こさせるものもあれば、暑さを吹き飛ばすこともある。梅雨の間に生い茂った草に隠れていることも多い夏の花だが、見つけたときは、暑さを忘れさせてくれるかもしれない。
 季節ごとに異なる風景の多くは心を和ませてくれる。通り過ぎる景色の中に季節を感じることができるのも、市原の自然が豊かな証と思われる。
ナチュラリストネット/野坂伸一郎

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