ニホンイシガメの保護活動に奮闘中

市原高等学校 小賀野 大一 教諭

リクガメ、ハコガメ、ミドリガメ。普段耳にすることの多いカメはほとんどが外来種でありペットとして扱われているものである。そんな中、ニホンイシガメこそ日本固有のカメで本州、四国、九州及びその周辺の属島に生息しているが、近年房総半島のニホンイシガメが急激に減少している。
kame02「ニホンイシガメの減少の原因としてあげられる点は、大きく分けて3つ。イシガメの生息数を調査するため罠を掛けたが、捕獲数が少ない上に、四肢の欠損や傷が確認できるカメが目立った。これは外来生物のアライグマが主な原因。次に乱獲、つまり密漁が挙げられる。数が減少するほど不幸なことに生物自体の価値は上がり、イシガメが生息できる北限と言われている千葉の房総館山周辺では乱獲が行われている。そしてもう一つが外来カメであるクサガメとの交雑で、イシガメ本来の形質ではなくなってしまっている」と話すのは、県立市原高等学校に勤務する傍ら、千葉県野生生物を考える会のメンバーとして環境保全活動に尽力する小賀野大一教諭(56)。
他にも、水質汚染や耕作放棄、河川改修や舗装道路による生息地の分断などの要因がある。人間が住みやすいように改変することで、それはイシガメの越冬地までをも消失させたのだという。「ニホンイシガメは河川内のえぐれた横穴や流れの緩やかな淀み、溜池で越冬する。房総半島の溜池はほぼクサガメに占領されつつあり、河川上流や支流に生息するイシガメはそこがコンクリート化されることで住めなくなった。それにクサガメが行かないような山の中の流れが速く水深の浅い川はアライグマがいて補食される。自然護岸が少なくなると数種のカメが集結、さらに雑種が増えていくことを懸念する」といい、イシガメにとって行き場のない危機的状況なのである。
これら様々な問題に向けて、小賀野さんはどんな活動をしているのか。「現段階では、千葉県の野生生物を考える会として土日に川の支流でイシガメの捜索をする。活動期は罠を張り、越冬期に入れば、胴まで川の水に浸かり手を突っ込み足で探る。捕獲したカメはすべて測定し、外来や雑種のカメは回収して、生息地の保全を行っている」というが、「まだまだ保全方法は模索中。アライグマの被害地では避難させたイシガメの繁殖にも取り組んでいるが、アライグマの駆除が思うように進んでいない現状ではイシガメを帰す場所もない。新たな生息地を探すにも時間的に難しいことも。だが緊急を要する題材ゆえに、私達は優先順位をつけて実行しなければいけない」と小賀野さんは熱く語った。
だが、保全活動を行う上で楽しいこともある。勤務する高等学校の生物室ではカエルやサンショウウオ、なんとウーパールーパーまでと多くを飼育し、「野外活動の際、必要なら動植物を持ち帰る。授業で生徒達に見せて喜んでもらえるのは嬉しい。また、汗を流して植物保全のための草刈りや両生類の産卵地の造成を行なう。普段と違う行動で気持ちはリフレッシュでき、稀少生物の保全という難しい問題に向き合うことでみんながなんとかしようと一つになれる。また、新たな生息地が確認できると幸せな気分になれます」と続けた小賀野さんは、イシガメとクサガメを両手に笑顔を見せた。
そして、「今後も継続的に、ニホンイシガメの生息環境を整えてあげることが重要。でも、緊急を要する場合にはメスの個体を回収し人工的に増やす域外保全という手段も視野に入れなければならない。昨年7月に複数の団体で結成された千葉県ニホンイシガメ保護協議会では、館山など重要な地域でイベントを開き、地域保護団体や市民の方々と交流して繋がりを持ち、ニホンイシガメの状況に対する認知度を高め、乱獲に対するパトロールを図るなど計画が進められている」と続けた。全国にさきがけて保全に乗り出したこの活動の輪は確実に広がりを見せており、人間と動物のよりよい共存を目指して突き進んで行くに違いない。

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