房総往来

花の絨毯 山里吾郎

 目映い新緑と色鮮やかな花々。春の到来は季節の移り変わりを一番、実感させる。冬からの決別はまずサクラ。淡いピンクの花びらが日本中を浮き立たせる。追いかけるようにツツジ、フジ、ボタン、シャクヤク。まさに百花妍を競い、やがてアヤメ・ショウブが梅雨を連れてくる▼今年は冬が長く、寒さもひとしおだったせいか、4月は春の花を堪能した。市原の新名木になりそうな「大俵山桜」をはじめ各所のシダレザクラ、チューリップ、大ぶりのボタン、貴重な白いカタクリの花も目にした▼そのなかで強烈な印象を残してくれたのが芝桜。群馬県館林、埼玉県秩父市の羊山公園など全国の名所は良く映像で目にしていたが、群生を間近で見たのは初めてだった▼東京ドイツ村。隣の袖ケ浦市に2001年に開園した遊園地。ほとんどが芝生に囲まれた広場で、東京ドームの27倍。「ドイツの田園風景」をイメージ、東京の冠は(東京湾)アクアラインに由来したという▼近過ぎるせいか、同園を訪れたのも初めてだった。年末のイルミネーションの時期に一度は計画したのだが結局、春を待っての訪問となった▼多くの人を飲み込んだ園内で、芝桜はすぐ目に飛び込んできた。薄ピンク、薄紫、白…。鮮やかな花の絨毯が高台を埋め尽くす。しばし見惚れたあと撮影ポイントを求めて人波をかき分け上へ、上へ。登り切ったところから見下ろす素晴らしいコントラスト。びっしりと埋め尽くすピンクと薄紫の花々の先に観覧車を写し込み、
満足の絵図が完成した。

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