古代人の石枕への思いとは

 死者の頭部を支えた古墳時代の石枕。「石棺に直接枕を彫刻したもの、別作りで棺に嵌め込んだもの、単独のものがある。全国で発見された単独の石枕120例のうち70例が旧常陸国と旧下総国にまたがる常総地域に集中する」と話したのは講師の(公財)千葉県教育振興財団の白井久美子さん(市原市ちはら台在住)。9月10日、市津公民館主催市津倶楽部の第5回『古墳時代の石枕 石枕と死者のマツリ』が開催され、28名が聴講した。
 かつて霞ケ浦、印旛沼、手賀沼は『香取海』と呼ばれたひと続きの内海で、北関東から石材などの物資を運ぶのに利用された。5世紀を中心にこの沿岸で広まった石枕は『常総型』と言われている。頭を置く部分を彫りくぼめただけの単純な形から『立花』という石製の装飾を枕の周囲の穴に差し込む複雑な形へと独自に発展した。常総型石枕の南限となる姉崎二子塚古墳では、白井さんが「最も美しい」と強調する国指定重要文化財の直弧文付石枕が出土している。
「立花は必ず石枕から取り外され発見される」そうだ。遺体を別の場所で一定期間安置する『殯』という儀式を行い埋葬したことと関連があると考えられている。白井さんは「西日本から伝え聞いた巨石をくり抜いた石棺への憧れが、石棺の加工に適した石材の採れない常総地域の古代人に独特な細工をした葬送具を作らせたのではないか。玉に霊力を求め、勾玉二つを背中あわせにした形の立花で死者を弔ったのだろう」と話した。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1.  今年は小湊鐵道開業100周年。これを記念し、アートによる地域づくりの拠点である市原湖畔美術館は、小湊鐵道とコラボプロジェクトを進行中。小…
  2.  成田山公園で毎年行われる冬のイベント「成田の梅まつり」。会場は成田山新勝寺大本堂の奥、16万5000平方メートルもの広大な公園。四季折々…
  3. 【写真】パキスタン・カラチの整備途中の農場で、働く青年たちと田中さん(前列右端)      36年間の市議会議員のあと、パキス…
  4.     ◆一席 記念日を遅れて祝い根にもたれ  一宮町 黒猫胡桃     ・老プランあまく見積り火の車  茂原市 道譯賢…
  5. 【写真】講演する家田さん      昨年12月、市原市市民会館で開催された『令和6年度市原市人権・男女共同参画フォーラム』。男…
  6. 【写真】はにわ博物館展示室の姫塚埴輪        昨年8月、千葉県殿塚古墳・姫塚古墳出土埴輪(総数48点うち殿塚古墳30点、…
  7. 【写真】第1回ドリームコンサートにて。2部では会場とステージが一体に &…
  8.  明けましておめでとうございます。2005年5月に「こでまりの夢」のコラムが始まって今年で20年になります。今回は第1回で掲載しました『か…
  9. 【写真】西本さん。大谷家具ギャラリー工芸館にて、展示作品と      大分県別府市在住の竹細工職人・西本有(たもつ)さんは、市…
  10. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】パキスタン・カラチの整備途中の農場で、働く青年たちと田中さん(前列右端)      36年間の市議会議員のあと、パキス…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る