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森を守るエキスパートがマウンテンバイクで走る
- 2015/3/20
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房総森輪会 代表 岡部正史さん
市原市在住の岡部正史さん(62)が『房総森輪会』を立ち上げて3年が経った。房総森輪会の目的は、主にマウンテンバイクの走行する里山エリアの保全活動と普及活動である。
「私のマウンテンバイクの経験はもう30年以上になります。仕事で千葉に来てからは、森の中を走っていました。そして、年々里山の状態が荒れて行くことに気づいたんです」と話す岡部さん。
元々、市原市で活動する『米沢の森を考える会』などで里山保全に関わっていたものの、マウンテンバイクに乗る仲間4人で同会を結成。仲間が仲間を呼び、今ではメンバーも26人まで増加した。活動拠点としているのは、市原、袖ケ浦、君津の3市。鹿野山の白鳥神社すぐ近くにあるログハウスでストーブに薪をくべながら、岡部さんは嬉しそうにほほ笑んだ。「森を回っている間に、この裏にある建具工場の持ち主である鈴木さんと知り合ったんです。今は色々な工具をお借りして間伐した木材を加工したり、とてもかけがえのない場所になっています」。
房総森輪会の活動内容は大きく分けて3つ。1つ目は森林パトロールで、倒木がないか・侵入者はいないかなどをチェックしている。侵入者がオフロードバイクでむやみに森を走り回ると、轍ができてしまう。「確かに森の中は運転のスキルもいるので楽しいんです」と走ることの楽しさを認めながらも、その行為に警鐘を鳴らす。轍に水が入れば地盤が弱くなり、山が切れる。そうして倒れた木々は放置され、山が荒れてイノシシが徘徊する。パトロールをすればすぐに崩れかかっているのを見つけ、直すことが可能。背中にチェーンソーをかついでマウンテンバイクで現場に行けば迅速な行動もとれるのだ。 そして、2つ目が間伐・制作である。前出のログハウスも、工場裏の森に手を入れて間伐した木材を使用し、メンバーが2年かけて作り上げたもの。太い丸太が幾本も積み上げられ、瓦となった板は約6千枚。「まだ細かい所の修正は必要なんだけどね」と岡部さんは笑うが、薪ストーブのある屋内は温かくほっと息をつける空間に仕上がっている。自ら作ったとは思えないほど綺麗な建物以外にも、同会が制作してきたものがある。ベンチなど小さめの家具や、森の中を整備するにも必要な橋まで、その技術には目を見張るものがある。間伐をしても作業時間や手間がかかるわりに、木材は活動資金を得るに足る対価とならない。ボランティアで活動をしているが、作業をするには物資も必要だ。それならば、木材を製品にしようと考えたのだ。また、「今後はログハウスを多目的スペースとして使えるよう目指しています」というように、鹿野山を訪れるのはサイクリストだけではない。観光で訪れた人向けに、特産品を紹介できるような準備も進めている。
メンバーのほとんどは男性が占め、9割が会社員という実状。結果、作業をするのは週末のみ。メンバー間だけでなく、里山に住む地域の人々との信頼関係を築くのにも時間はかかる。限られた時間で、「なにより大切にしているのが事故を起こさないこと。正しい保全技術をしっかりと学び、継承すること。次世代にすばらしい森林環境を残すこと」と熱い思いを持つ岡部さんが話す、これこそ3つ目の活動内容である。同会では体験で研修の受け入れを行い指導にも力を注ぎ、岡部さんは講師としてあちこちへ赴いている。真剣にやるからこそ求められるスキルは高く、安全のためにもチェーンソーの資格講習を受けるに必要な資金援助を行う場合もある。
人間が楽しみを求めるのは間違ったことではない。しかし、流行しているイベントにただ参加するだけでは森を崩しかねない。同会は、「マウンテンバイカーが森の状態を気にするようになり、走りながら里山を管理できるようになれば、森に欠かせない存在になれる。山にいて欲しいと思われたい」と強く願っている。同会は、環境保全に興味のある人も、マウンテンバイクが好きな人も随時会員を募集している。
問合せ 房総森輪会
E-mail boso.shinrin@gmail.com