「地元産の旬の食材を使った料理を提供し、多くの人が集う交流の場をつくりたい」

JA市原市女性部

 皆さんは市原市南部で収穫される「加茂菜」と呼ばれるアブラナ科の野菜をご存知だろうか。栽培が難しく市原市でも加茂地区などの限られた地域でしか作られておらず、ひと昔前までは、加茂菜を求めて遠くからリヤカーを引いて買いに来る人たちもいたという。   
 加茂菜が加茂地区で栽培されるようになったのは、明治から大正の時代、高滝神社の前にある旅館の主人が、宿泊客から種をもらい畑に蒔いたと伝えられている。1990(平成2)年にダムが完成する前まで、神社の近くを流れる養老川は、しばしば氾濫し流域の住民達を苦しめた。しかし、川の氾濫は水が引いたあとに肥沃な土壌をもたらし、加茂菜の栽培にも適していた。
 だが、近年は栽培者も減り、「幻の野菜」とも言われている。そんななか、「市原の宝、伝統的な野菜、幻の加茂菜を残し伝えていこう」と7年前から、いちはらクオードの森(旧・いちはら市民の森)で南市原の活性化に取り組む『高滝一九会』が加茂菜漬けの講習会を行っている。
 そして3月21日から5月17日までの土曜・日曜・祝日(11~15時)、養老渓谷にある古民家ギャラリー『アートハウスあそうばらの谷』に隣接する『おもいでの家』が再開され、JA市原市女性部の皆さんが提供するメニューの中で加茂菜漬けが登場し、販売もされている。
『おもいでの家』は、いちはらアート×ミックス会期中、JA市原市女性部の皆さんがレストラン『なっぱすごろく/山覚俵家』でスマイルズ 生活価値研究所のプロデュースのもと、調理や接客に携わった建物だ。ランチビュッフェ『季節の混ぜごはんセット』は大人気だったが、それ以上に「スタッフの温かい接客や優しさに心が和んだ」と、皆さんの心のこもったおもてなしが大きな反響を呼んだ。 
 アート×ミックス終了後、JA市原市女性部に大勢の人から「再開しないのか」、「再開してほしい」という声が届き、昨年、紅葉のシーズンに『おもいでの家』として、1カ月ほどオープンし、手作りのお汁粉やコーヒー、煎茶などのメニューで来訪者を迎えた。その後も継続を望む人が多かったことから、「たくさんの観光客が訪れるのに休憩する場所がないし、高齢化が進み自宅に引きこもりがちな地域の人たちが集える交流の場としても活用しよう」と考え、今回の再開をきっかけに、『おもいでの家』を活動拠点にして今後も不定期にだが、オープンしていくつもりでいる。
 今回のメニューは、季節の混ぜごはん(味噌汁と漬け物付き)、お汁粉(漬け物付き)、ホットコーヒー、煎茶。お汁粉が苦手な人には、磯辺焼きや安倍川も用意する。餅の米やお汁粉の小豆、ゼンマイなど混ぜごはんに使う食材は全て市原産。JA市原市女性部代表の大曽根美ゑ子さんは、「お餅は朝つきたてのホカホカ。混ぜごはんには、その日採れた山菜、タケノコやワラビ、セリ等を入れ、加茂菜をトッピング。フキノトウの天ぷらも付けたい。漬け物は加茂菜やミョウガ等を」と話す。
 また、前回好評だった手芸品、帯や着物をリフォームしたバッグなどの販売もする。他、各人が持ち寄った未使用の食器を飾りや料理に使うが、こちらも前回同様、購入希望者には格安で譲る。もちろん、JA市原市自慢の米、有機肥料を主体としたこだわりの市原産コシヒカリ『養老のめぐみ』や『更級米』、『ふさこがね』、人気急上昇の『梨サイダー』の販売も。
「アート×ミックスでは、使う食材から切り方、大きさ、器と全て制約があった。でも、今度は自分たちらしさ、市原らしさを前面に出していきたい。地元の人たちが食べる地元産の安心・安全な旬の食材で作る混ぜごはんを味わってください。これからも、この場所を通して地元の人を巻き込んで地域活性化につなげる活動をしていきたい」と大曽根さん。
 これまで『おもいでの家』で行ってきた、すあま作り、押し寿司講習会、布ぞうり作り、新聞紙でコサージュ作りなど、今後も地元の人たちに声がけして続けていきたいと話す。更に、公民館から料理講座の講師の依頼も受けており、皆さんの活動の場は広がっている。「もっと加茂菜をたくさんの人に知ってもらいたい」と、レシピの開発にも余念がない。
 ちなみに、加茂菜の収穫時期は2月中旬から3月中旬頃。昔から伝わる漬け物は、収穫し水洗いしたら、20本ぐらいを目安に一束にし、塩をふって洗濯板のようなまな板にのせ、とろみが出るまで転がすようにこすりつける。加茂菜独特のぬめりや泡立ちがでてきたら漬け物容器に入れる。翌日、塩加減をみて塩を足し、出た水分を捨て、重しを半分にする。その翌日から食べ頃になる。漬け物に鰹節をかけて少し醤油を垂らしたり、納豆に混ぜるのもいいし、炒め物にしても美味しいとか。茹でる場合は茎が柔らかいので、ホウレンソウより茹で時間は短くてよい。是非、この時期ならではの味を試してみては。

問合せ JA市原市経済部
TEL 0436・36・5811

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