ぽかぽか陽気に誘われて カタクリが咲く斜面林

 3月30日(月)、千種コミュニティセンター主催で『カタクリ観察』講座が開催された。講座の会場となるのは市津公民館から徒歩約30分の場所にある『風呂ノ前カタクリ自生地』。18名の受講者は市津公民館に集合後、自生地へ向けて出発。道中にある草花を発見しては手を伸ばす。5月中旬並みの暖かさだったこの日は、桜も満開。「少し歩くだけで汗ばみますね」と受講者が口々に会話を交わす。
自生地は里山の奥まった所に静かに存在する。「風呂ノ前というのはこの辺りの小字。変わっていますよね」と話すのは、同自生地の保護活動に尽力する風呂の前里山保存会、代表の中山美代子さん。「活動を始めて10年が経ちました。当初のメンバーで活動を続けているのは私のみになってしまいました。偶然この場所にカタクリが咲いているのを見つけ、大変だったこともたくさんありますが、こうして花が咲いてくれると本当に達成感があります」と感慨深げだ。
 カタクリは寒い地方の植物で、千葉県では重要保護植物に指定されている。北斜面の落葉樹林の下、水に近い場所に多く自生しているが、花を咲かせるまでになんと8年から10年もかかる。1年目の春に、種は松葉のような細長い1枚の葉を伸ばし、2年目からは1枚の本葉を出す。毎年、葉と茎が少しずつ大きくなって養分を蓄えていき、2枚の葉を付けるようになって花が咲く。年月がかかる上に、春冷えの時期10日ほどしか花が持たない。さらに、雑木林の手入れがされなくなった里山では生育環境が難しくなっている。「それでも、私たち下草刈りや落ち葉かきをするようになって10年。次第に花の数が増えてきたんです」という中山さん。
 急な斜面林で、けが人が出たことはないというが、作業をするには容易ではない。作業自体初めてでやり方も分からず独学で学び、鎌で草を刈っていて笑われることもあった。だが、今ではカタクリに限らず様々な種類の草花が斜面に色を付けるようになった。「こんなに咲いているなんて。紫のちょうちんみたいでかわいいね」と話す女性は、カタクリの花をカメラに収めようと腕を伸ばす。「高山植物は多少分かるけど、里山の花の知識はあまりなくて。勉強になりました」と話す受講者も。
 カタクリの花は地面に向かって咲き、種の先端にアリが好む脂肪分があることで、アリが巣に持ち帰ろうと運び根を増やしていく。斜面に生息し、雨などで簡単に崩れ落ちることもない『自然の強さ』を持っているが、手入れをすることは必要だ。中山さんは、「私たちはここを市原の癒しの場所にしたい、そして子ども達に花のある故郷を残してあげたい」と望んでいる。同会は現在会員35名、『のんびり・ゆっくり・楽しい作業』をしているが、力仕事もあることから男性会員を大募集している。

問合せ 中山さん
TEL 0436-52-7487

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