千葉市緑区『椎名の郷』を歩く

 市原市ちはら台に隣接する千葉市緑区西南部は奈良時代の記録にもある集落『千葉庄椎名郷』であった。平安時代には房総平氏の流れをくむ千葉氏一族が支配。源平合戦で活躍した千葉常胤の弟胤光が椎名六郎と称し、代々椎名氏が居城した。江戸時代は生実藩森川家の領地。
 3月24日、ちはら台コミュニティセンター主催講座『ちはら散歩』が開かれた。講師の山田隆男さん(64)による自然観察と歴史の解説を聞き、参加者20名が歩いたのは『椎名の郷を巡る』約7.5キロコース。同センターから学園通りを渡り、かずさの道に出て北西へ千葉市に向う。桜並木は開花直前、たった一輪咲いた桜の花を見つけ喜ぶ参加者たち。ちはら台駅を越え、裸木のポプラが目立つ堂坂公園で山田さんがコースについて説明した。
 歩くのは江戸時代の古地図にもある道で、椎名郷の南側台地にあたる椎名上郷。北の椎名下郷にある椎名崎町には「今も畑地に椎名城址でピラミッド状になった3段の塚がある」と山田さんが写真を掲げると参加者は背伸びをして興味深そうに見つめた。
 足を踏み入れた郷の最南集落、茂呂は1575年に開村。1616年、茂呂村名主鴇田五郎左衛門が灌漑用の草刈堰を完成させたという。町内すべての道に昔からの小字名がついている。道路脇の毘沙門天を眺め、着いたのは1531年に日蓮宗日泰上人が開山した上行寺。境内には錦糸国民学校児童の疎開記念樹イチョウが植わり、境外には江戸時代の馬頭観音や子安明神の祠もある。
 菊間や市東村と刻まれた大正時代の道標がある茂呂町集会所に寄ったあと、茂呂台を下り、143年の歴史がある椎名小学校脇を通る。山田さんが指す足元には、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウなど春の野草。地に這うように咲くタンポポは「受粉して熟すと綿毛を飛ばすため上に伸びる」とのこと。
 富岡町にある現千葉市緑区連絡所、昭和7年に建設された旧椎名村役場に到着し、レトロな木造洋風2階の建物を眺めた。同年同形式建造の旧生浜町役場は市有形文化財だ。車道を東へ進むと左手に出羽三山信仰の供養塚が見える。隣の長徳寺は真言宗豊山派の古刹。県指定有形文化財の木造薬師如来坐像と梵鐘がある。鐘は里見氏の陣鐘であったと伝わる。稲荷神や庚申塔も安置されている。
 イオンおゆみ野でひと休みし、瓦窯通りを南に下り、地元住民が「おおかんざ」と呼ぶ大金沢町へ。金城寺を経て、着いたのは同寺境外堂の千手観音堂。山門左手の仁王像は江戸時代の作、右手の像は15年前に作られた。大正時代までは18日参りに多くの参詣客で賑わったという。ノビルやスイバなど食用野草を発見しながら坂を下り、東に行くと日枝神社。大金沢自治会館近くには道祖神などの祠がある。瓦窯通りに戻りさらに南へ。坂を下りコンビニを左折して帰路に着いた。

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