アートの祭典、再び

 昨春、市原を賑わせた芸術祭『いちはらアート×ミックス』がこのゴールデンウィークにミニイベント『アートいちはら2015春』として帰ってきた。昨年から市原市に関わり続けてきた作家が中心となり、市内各地で作品展示、公開制作やワークショップなどを行った。5月5日、旧里見小学校での様子を取材した。
 連日満員御礼だったのは『フォーイ磁石を作ろう!』。講師は、鉄を使った作品『地熱の扉』を制作中の小沢敦志さん。鉄製の3つ又フォークに熱を加え、真ん中の歯を曲げて支点にする。強力な電磁石を使って鉄を磁石につくり上げたら、ゆらゆら揺れる『フォーイ磁石』の完成。真剣な眼差しで製作に挑む子どもたちの姿が見られた。
 ある一室で行われていた角文平さんによる『養老山水図』の公開制作。かつて児童が使っていた机を繋げて並べ、天板を彫ったりベニヤ板を積み上げるなどして、農村部から工業地帯まで養老川沿いに変化していく市原市の景観を作っていく長期プロジェクト。「きれいに使用されていた天板に市原市の痕跡を残そうと考えました」と角さん。
 松本力さんによるアニメーションワークショップ『踊る人形』では、長い巻き紙に、微妙に変化していく絵を描く。繰り返される過去、現在、未来を表しているという。突然、色や形が変わってもOK。自分と他人との絵を繋げて、それぞれの時間の繋がりを感じていこうというもの。最初は「何の絵を描こう?」と戸惑いがちだった参加者も、慣れてくると動きの変化を連ねていく作業に夢中になり「おもしろい!」との声が。翌日、全ての参加者が描いた絵をアニメーションにした上映会が開かれた。昼時には地元の里山活動団体が運営する『里山食堂』が大好評。タケノコや手作りコンニャクなど地元の食材をふんだんに使ったカレーやオムライスを提供した。
 西原尚さんによるライブパフォーマンス『その空間はそこにある』は、長い棒の先についた鈴で壁や天井を叩いて回るところから始まった。まるで探しものをしているかのような動作。観客の視線が西原さんの動きに注がれる。世界各国の民族楽器や自作の楽器を鳴らし、様々な音を重ねていく。思いつくままに作り出す音によって生まれる独特の空間。それは動物の鳴き声がこだまするジャングル、はたまた中東の世界、聴く人によって異なるが、不思議な世界へ観客を誘ったことは間違いない。終了後は「これはどこの国の楽器?」、「笛の音色がよかったわ」など珍しい楽器を目の前に興味津々の観客からたくさんの質問や感想が飛び交った。
 他にも多種多様な作品が来場者を魅了した。子ども達にとっても、固定観念を取っ払った非日常的な世界を味わえる貴重な体験となったのではないだろうか。

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