房総往来

フォークの時代 山里 吾郎

 1947年4月、団塊世代第1期の生まれ。戦後の混乱期が終わり、民主主義とは言えない資本主義が急激に根を張り始めた頃に多感な高校、大学時代を過ごした▼ポップスやGS(グループサウンズ)が流行る一方で、若者たちがのめり込んだフォークソング。音楽もまた、多様な時代だった▼ロックアウトされた大学。行き場を失い漂流する学生たち。フォークの旋律はそんな若者の魂を強烈に揺さぶった▼前置きが長くなったが、そんな青春のノスタルジーを想い起こすコンサートに出掛けた。6月20日、市原市民会館で行われた森山良子「フォークソングの時代」。取り立ててファンということではないが、あの美しい声で奏でるフォークの名曲を聴きたかった▼森山は1948年1月生まれ。デビュー時は日本のジョーンバエズと呼ばれた。本人はジャズ志向だったようだが時代の閉塞感がフォークを渇望。ギター一本の弾き語りがジョーンバエズを連想させた▼19歳でレコードデビューした森山も実際、反戦的な色合いの濃い「風に吹かれて」「花はどこへ行った」などフォークの代表曲を歌っていた。今回のコンサートでも、売られていく仔牛を歌った「ドナドナ」を弾き語り。美しい声と物悲しい旋律が会場を静寂で包んだ▼もう一つ、われわれフォーク世代が森山を語る時、忘れえない曲がいくつかある。まずデビュー曲の「この広い野原いっぱい」は溢れる愛を語り、「涙そうそう」は若くして死んだ兄を想い森山自身が詞をつけた。そしてフィナーレの「さとうきび畑」。長い歌と「ざわわざわわ」の繰り返しが深いうねりとなって聴く人の胸を打つ。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1.  今やサーファーの聖地となった長生郡一宮町には、上総国一ノ宮の『玉前神社』(たまさきじんじゃ)が長い歴史と共に鎮座する。ご祭神は神武天皇の…
  2. ◆一席 若者の人生曲げる闇バイト 大網白里市 渡辺光恵 ・世渡りは適度に自説曲げ伸ばす 東金市 伴里美 …
  3. 【写真】スパリゾートハワイアンズ・ウォーターパーク ●千葉県立美術館開館50周年記念特別展「浅井忠、あちこちに行く~むすばれる人、つながる時…
  4. 【写真】五井小の歴史をたどるスライドショーの冒頭、紹介する子どもたち  昨年と今年は、創立150周年を迎える小学校が多数ある。1872年の…
  5.  冬の使者と呼ばれるハクチョウ。シベリアなどから北海道を経由し、冬鳥として日本へ広く渡って来る。近年、地球温暖化の影響で、繁殖期と越冬期が暖…
  6. 【写真】坂下忠弘  来春3月2日(日)、市原市市民会館・小ホールで開催される『いちはら春の祭典コンサート2025』。市原市…
  7. 【写真】千葉県立中央博物館・御巫さん  11月24日(日)まで、千葉県立中央博物館で開催されている『二口善雄 植物画展』。…
  8. 【写真】川口千里(左)、エリック・ミヤシロ  日本を代表するトランペット奏者、エリック・ミヤシロを迎え、いま最も注目を集め…
  9. 【写真】うたと語り「今、この町でこの歌を」  毎年、夏に開催される『市原平和フェスティバル』。平和への祈りとメッセージが込…
  10.  今回は「映画音楽」特集の第1回。良い映画では必ず、音楽・主題歌が感動を与えてくれます。テレビCMでも使われる名曲もあり、何処かで聞いたこと…

ピックアップ記事

  1.  今やサーファーの聖地となった長生郡一宮町には、上総国一ノ宮の『玉前神社』(たまさきじんじゃ)が長い歴史と共に鎮座する。ご祭神は神武天皇の…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る