2040年の市原市は私たちが担う 中高生が新市長に政策提言

 将来世代の意見を聞きたいと、次期総合計画策定を進める市原市と千葉大学を中心とした研究チームが『いちはら未来ワークショップ』を共同開催した。参加したのは公募による市内在住の中高生40人。8月19日から2日間にわたり意見交換をし、新市長小出譲治氏に政策を提言した。
 初日、サンプラザ市原にて、緊張気味の生徒の気持ちをほぐすように白衣に白髪のカツラをかぶって登場したのは千葉大学大学院人文科学研究科教授の倉阪秀史さん(51)。社会の問題を科学の力で解決する研究をし、同ワークショップを開く研究プロジェクトを率いる。倉阪さんは「2040年の市原市にはいろいろな課題が山積み。未来市長になったつもりで2015年の市長にやっておいてほしいことを提案し、未来を変えてみよう」と呼びかけ、人口、産業構造、農林業、環境など25年後の市を予測し、説明した。
 「人口は現在の2割減」、「高齢化が進む」など日本の縮図のような市の前途に問題は多い。課題を理解したうえで生徒たちは実際の街へ出かけた。正午前、五井駅から小湊鐵道に乗り込み向かったのは南部地域。上総牛久駅で降り、班ごとに探索した旧商店街の印象は「畳屋、染物屋、石材店など昔ながらの専門商店があった」、「空き家が多い」、「ほっとする」などだった。
 次にバスで内田未来楽校へ。築90年の木造校舎や周辺の自然を保全する報徳の会から「地域交流の場として活かしている」との話しを聞いた。校内に展示した昔の写真や農具を見たり、質問をしてメモを取ったりした生徒たち。講師の姿に自分を重ね、「自分たちも次の世代に学校を残したい」と地元への思いを話す中学2年生もいた。同校で昼食をとったあと北部の出光興産(株)千葉精油所へ。操業内容などを映像で見たあと、精油施設や同社が開発した新素材を見学した。現在、臨海部の企業からの税収は市税の40%を占めるが、将来予想では税収が減る可能性があるという。
 「市原市を舞台に小説を書いて全国の人に来てもらいたい」と話した若葉中学校2年生の下田さんは1日を終え、「住んでいる北部の住宅地は便利だけど、自然豊かな南部もなくなって欲しくない」と感じたそうだ。一緒にいた辰巳台中学校2年生は「南北の違いを均等化するにはどうすればいいのかな」と未来市長として頭を悩ませていた。
 2日目は疑問や問題点を出しあい、提言をまとめた。それぞれアイデアを書いた付箋を貼ると各班の模造紙はすぐにいっぱいに。市長、国立環境研究所や筑波大学などの研究者、総合計画策定に関わる市職員らを前に、「いちはら未来募金を作る」、「交通空白地帯にタブレットを配れば、ネットで買い物できる」、「ゴルフスクールをつくる」、「市原の工場や自然を全国にPRする」など班で話し合った政策を堂々と発表した。
 「内田未来楽校のきれいな井戸水で流しソーメンを行なったらどうか。竹利用が森林保全にもなる」との案に、力を得たように「ぜひ取り組んでみたい」と答えたのは報徳の会会員。「JRを小湊鐵道に乗り入れ、活性化する」という意見には市長が小湊鐵道の新事業を披露する場面もあった。市長は「皆さんと皆さんの出した政策は市の財産。たくさん宿題をいただいた」と市政の参考にすることを約束した。
 今回の事業は人、人工物、自然、仕組みの4つの資源に注目した『多世代参加型ストックマネジメント手法の普及を通じた地方自治体での持続可能性の確保』という研究プロジェクトから生まれた。市原市は研究対象として選ばれた自治体の一つとして以前から協力している。「地域の問題について先入観のない中高生の意見を知りたい」と考えていた倉阪さん。「期待以上の成果。市原市をスタートに今後は八千代市、館山市でも開き、自治体間比較データベースや将来予測のソフトウェアの開発に生かしたい。いずれ、全国の自治体に広げる」とのこと。
 小中一貫校加茂学園の卒業生で市原中央高校の奈良輪さんは「南部の良さを知った。簡単ではないができることがあるはず」と2日間の感想を語った。「みんなが一生懸命街づくりを考えれば、社会全体が幸せになれる」と真摯に話し合った中高生。大人はどう応えるのだろうか。

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