国境を越えた芸術祭 『オーロラ』と日本に共通して見えるものとは?

 12月15日(火)まで、富津市金谷で開催されている『スウェーデン芸術祭―オーロラin金谷』。本館にて3つの会場に飾られているのは、6人のスウェーデン芸術家と1人の現代日本画家の作品。同企画展は、日本画家である大野静子さんが長い年月をかけて彼らと交流を深めていたことで実現した。
 タイトルにもある『オーロラ』は、彼らスウェーデン芸術家たちのグループ名。自然豊かな森と海に囲まれた国で生まれたのは、絵画や彫刻、造形から映像まであらゆるジャンルに及ぶ。ほとんどの展示品はスウェーデンから運びいれたものだが、9月上旬に2週間滞在した彼らが、金谷の自然に触れて生み出したものもある。
「時間をかけて、地道に丁寧に作業するのが彼らの国民性といっても間違いないです。私は『陰で』という作品がお気に入りです。スウェーデンの芸術を見る機会はなかなかないので、日本とは何か違うな、と感じてくれれば嬉しいです」と話すのは、副館長の松岡正秀さん。
 松岡さんは、『オーロラ』グループがそれぞれ付けたタイトルの和訳をすべて担当した。その中には、植物や昆虫を描いたものをはじめ、繭を見立てて吊るされた針金、木炭で緻密に表現された人物など多岐に渡っている。触れることはもちろん叶わないが、抽象的な作品を理解しようと顔を近づけてしまうほど。
「都内から来たんですが、近くのレストランでポスターを見て来ました。初めは空の『オーロラ』の写真が見られるのかと思ったんですが、違うんですね」と笑った後、「第1展示室に飾られていた人物画はとても惹かれました。タイトル通りに憂鬱そうな人の顔は一種の恐怖さえ感じましたが、不思議とどこか温かいんです」と続ける男性。自分の中にある『憂鬱』が顔をあげて恐怖を感じるとともに、誰しもがその感情を持っていることに安心して温かくなるのだろうか。答えが分からない、だからこそ自分の目で見て欲しい。
 大野さんは、「彼らはアートを通して、現代社会の問題点をしっかりと掲げているんです」と話す。館内入口を入ってすぐ右手に見えるのは、世界を模した石に雨となる水滴が注いでいる造形作品『雨』。世界が水に沈んでしまいそうな危機感を覚えるそれは、大野さんのお気に入りだ。作品を見た時、あなたの心はどう叫ぶだろうか。
 本館に入りきらなかった作品は、別館『石蔵』に併せて展示中。11月21日(土)、演奏者松本玲子さんによる『ミュージアムコンサート』も開催予定。(午前11時半からと午後2時半から各1時間ずつ。1500円で要予約。)芸術祭の開館時間は午前10時から午後5時まで(最終入館は午後4時半)。入館料大人800円、中高生と65歳以上500円、小学生200円。毎週水曜日休館。

問合せ 金谷美術館
TEL 0439・69・8111


Warning: Attempt to read property "show_author" on bool in /home/clshop/cl-shop.com/public_html/wp-content/themes/opinion_190122/single.php on line 84

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1. 当ホームページは、2/17に新ホームページのオープン予定のため、情報掲載が1/31までとなります。 2/17までに開催するイベント等…
  2.  昭和を代表するスター「石原裕次郎」は今年、生誕90年。映画やドラマで大活躍し、歌手としてもヒット曲多数。誰からも愛された「裕ちゃん」の魅…
  3.  鉄道写真愛好家の皆さんへお知らせです。今年6月5日(木)~6月10日(火)に開催予定の『小湊鐵道を撮る仲間たち展』に写真を出展いただける…
  4.  今年は小湊鐵道開業100周年。これを記念し、アートによる地域づくりの拠点である市原湖畔美術館は、小湊鐵道とコラボプロジェクトを進行中。小…
  5.  成田山公園で毎年行われる冬のイベント「成田の梅まつり」。会場は成田山新勝寺大本堂の奥、16万5000平方メートルもの広大な公園。四季折々…
  6. 【写真】パキスタン・カラチの整備途中の農場で、働く青年たちと田中さん(前列右端)      36年間の市議会議員のあと、パキス…
  7.     ◆一席 記念日を遅れて祝い根にもたれ  一宮町 黒猫胡桃     ・老プランあまく見積り火の車  茂原市 道譯賢…
  8. 【写真】講演する家田さん      昨年12月、市原市市民会館で開催された『令和6年度市原市人権・男女共同参画フォーラム』。男…
  9. 【写真】はにわ博物館展示室の姫塚埴輪        昨年8月、千葉県殿塚古墳・姫塚古墳出土埴輪(総数48点うち殿塚古墳30点、…
  10. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 当ホームページは、2/17に新ホームページのオープン予定のため、情報掲載が1/31までとなります。 2/17までに開催するイベント等…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る