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森林浴、米作り、もてなしの心 加茂地区から「癒し」を発信
- 2016/2/26
- 市原版, シティライフ掲載記事
安由美(あゆみ)会
繁殖し過ぎた里山の杉林や竹林の保全に従事する団体が増えている中、耕作放棄地を復活させる形で里地の整備に取り組み、地域創生につなげようと努力している団体がある。平成5年に加茂地区で農事組合として発足した『安由美会』だ。当時の会員は4人。平日はそれぞれ他に仕事を持つ兼業農家。農業に割ける時間はわずかで、家族だけでは気持ち的にも続けていくのが困難になってきていた。そこで考えたのが労働力だけではなく農機具や機械を共同で購入しお互いに助け合いながら米を作っていくという方法。『安由美(あゆみ)会』という名前は現在の代表、鈴木四郎右衛門さん(66)の父親がつけたもの。「友が寄り合ひ(由)、平穏安らかに治まる事こそ(安)美しきなり(美)」との意味が込められている。「1人ではできないですよ。仲間がいるからアイデアを出し合ったりして楽しくやれる。意見を同等に言い合うことで前向きに物事を解決し進んでいける」と会員の男性。
こうして集った同志で、もうひとつ活動の幅を広げた。『いちはらクオードの森』の整備だ。「森を核として地域を活性化させよう」と10年ほど前、市原市が募集した指定管理者に立候補、選定された。現在の会員は19人。約120ヘクタール、東京ドーム約30個分の広さを持つ同森で、倒れたり枯れたりしたスギやヒノキの処理や散策コースの整備、菖蒲の植栽、バーベキューやキャンプに訪れた客の応対などを行っている。来園者が気持ちよく散策できるよう、ぬかるみやすい道には手作りの木道を渡すなど随所に気を配っている。大好評なのは70万個のLEDを施す年末のイルミネーション。毎年約1万3千人ほどが来園する。かつて様々な職種で働いていたメンバーが得意分野を生かし、例えばトイレの故障など不都合が生じても業者に頼まず最低限の費用で修理できるという利点がある。
「森の中では街と違って時間がゆっくりと流れる。ストレスから解き放たれ、ここにいる一時だけでも癒しを感じてもらえたら。お客さんとの他愛ない会話や自然の景色など、私たちが提供するのは高価なモノではなく『素朴さ』。それは人の心を温かくするものです」
ここ10年で来園者数は年間約1万3千人から約4万人に増えた。「きれいになったね、ホッとするねと言われるのが一番嬉しい。励みになる」と鈴木さんをはじめ会員は口を揃える。木道のそばで枯れ木の片付けをしていた77歳の女性会員は「空気が美味しい。自然に囲まれた気持ちのいいところで働いているから風邪なんてひかない。楽しいよ」とあふれんばかりの笑顔で話した。
農事に関しても、地域活性の軸となるよう幅を広げた活動を行っている。それは外部の手を借りるということ。会員が高齢化し、作業効率が悪くなってきたこともあり農業体験希望者を募ることに。田植えから草刈り、収穫まで農家の1年を体験しに神奈川県や埼玉県など県外から日帰りで様々な人がやってくる。田植えの時期には50人ほどが集まる。週末、同会が紹介する地域の空き家を借り、泊まり込みで農事に励む家族もいる。中には都内の保育所で英語教師をしているアメリカ人も。子どもを連れて家族で訪れ米作りに勤しんでいるそうだ。5月の連休には、田植え待ちのスペースでカエルやメダカ、ドジョウを追いかけ泥んこ遊びを楽しむ子ども達の姿もある。無農薬、無化学肥料で育てた米は美味しいと農業体験者からの評判は上々。
「外部からの視点によって気づかされることは多い。内部からの視点ばかりだと『井の中の蛙』になってしまう。例えば、都会の人からすると竹とんぼや竹馬など手作りのおもちゃが珍しくて喜ばれるから、そういった遊びも企画していきたい。客が来ると家をきれいにしようと思うのと同じで、外からお客さんが来るとなると里地、里山をきれいにしようと考える。その気持ちが活性化につながってゆく」会員の思いだ。『安由美会』は、これからも加茂地区の魅力を発信し続けていく。
問合せ いちはらクオードの森 安由美会
TEL 0436・96・1119