オリーブにかける夢、太陽と緑に囲まれた憩いの場を

「収益だけを考えた無難なものではなく、新しい発想で唯一のものを」持ち前のフロンティアスピリットで、市原市にオリーブ園『オリーブコミューン』を立ち上げた男性がいる。高山元春さん、75歳だ。人々が足を運びたくなるような突拍子もない何かを、と考えたときに頭に浮かんだのが国際連合の旗にも描かれている平和の象徴、オリーブ。房総半島ならではの温暖な気候も適していると、小豆島から『ミッション』と『ルッカ』の2種を、ジェトロ主催のセミナーで知り合ったチュニジア人から、国内初のチュニジア産「シュトウエイ」の苗木を入手。竹林を切り開き整地した丘陵地には合計約120本のオリーブの木がすくすくと成長しつつある。
 市原の東部、中野。妻の実家跡と周辺、約9900㎡の竹林を開墾したのが2010年。オリーブの実が本格的に収穫できるまでの7、8年は雑草刈りや剪定をしながら成長を見守る。日当たりと風通しを良くするため枝葉と枝葉の間には小鳥が抜けられるくらいの空間を作り、収穫しやすいよう上に伸ばさず横に広がる形にしていく。美味しいオリーブの木に群がるゾウムシの駆除も欠かせない仕事。オーガニック栽培が基本なので、農薬はほとんど使わず捕殺による駆除を行っている。
「アグリフィットネス」とは元春さんの造語。「農作業と聞くと、重労働というイメージがあるでしょ。でも、緑、風、太陽の下で働くことは、内面の疲れも癒してくれる最高のエクササイズになる。インドアで原発に頼ったエネルギーを使うより、自分の体から発するエネルギーを使う方がずっといい」。繁忙期には同園近所に住む幼馴染の高山卓英(たくえ)さんや飲み仲間が手伝いに集まる。故郷を離れ、現在は千葉市に住む元春さんの仲間は千葉大学関係者が多い。昨年から環境造園実習として同園を訪れていた千葉大学園芸学部の学生たちも研究の傍らアグリフィットネスに励んだ。「同園のランドスケープをどのように活用できるか」をテーマに今年1月、地域住民に向けて行ったプレゼンテーションでは、丘下の谷津田で水牛を飼い、モッツァレラチーズの生産をするのはどうか、などユニークなアイデアが次々と飛び出したとか。
 元春さんには強力なパートナーがいる。千葉大学人文社会科学研究科で公共研究を専攻している佐藤峻さん(27)だ。行政に任せきりにしない公共空間について研究を進めており「小湊沿線に限らず、市原市には瀬又の鯉のぼりなど各地域に素晴らしい特色がある。その魅力を公共空間に放ち、地元と外部にひらかれた繋がりができれば、相互にいい刺激を与え合う心豊かなまちになるのでは。地元と外部が連携した公共空間づくりを民間の手で行うことを試みたい」と話す。今年度は休学し、オリーブ園の手伝いに本格的に乗り出す。園の名前「コミューン」とは、フランスにおける「自治的な共同社会」のことだ。
 アベノミクス「3本の矢」ならぬ元春さんの掲げる「3つのCO(コ)」がある。コミュニケーション・コミュニティ・コモングッド。人とコミュニケーションをとりながらオリーブを育て、オリーブ園という公共空間で様々な人がふれあう。人と人がつながったコミュニティで、私利私欲を捨て喜びを分かち合う。人々を幸せに導くための元春さんの戦略だ。
 丘の斜面にはオリーブの他、タイムなどのハーブも育っている。元春さんが目指す構想は「和魂洋彩(わこんようさい)」。タケやケヤキなど、和の植物とともにオリーブやハーブ類など洋の植物を育てることで新たな彩りのある風土を目指す。園内、丘の上は遮るものがなく、東から昇り西へと沈む太陽のエネルギーを1日中受け続けることのできる場所。「太陽を神だと崇めていた昔の人たちは、エネルギーの強いこの地を本能的に選び生活を営んでいたのでは。北中野古墳群(発掘調査済)のひとつがここにあるのも頷ける」将来的には、オリーブを中心とした景観植物園として地元農産物の販売、ピザ窯の設置、500年もの歴史を持つ近所の光徳寺なども巻き込み、人々が集い心身を癒せる場所になればと夢を膨らませる。
 元春さんは昨年、千葉大学元教授の推薦を受け、輝いている60歳以上の人に贈られるプラチナエイジ(文化・教育部門)を受賞した。「年齢は関係ない。今、やれることをどんどんやっていきたい」と少年のように笑う。オリーブの実とともに、夢が現実になる日が待ち遠しい。

問合せ 高山さん
TEL 090・3235・5257

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