自然への愛情を筆にのせて

 花びらや葉の色と形、枚数はもちろん、どのようについているか、葉脈やおしべとめしべの1本1本まで植物の特徴を忠実にとらえ、かつ芸術性をも追求する植物画。その生態を描くことが目的なので、1枚の画用紙に花と実、葉と根などを描き並べることも。写真という技術がまだ存在しなかった古代エジプトや中国で、薬草を採取する際に品種を見分けるための手段として用いられたのが始まり。
 袖ケ浦市郷土博物館で毎月1回、植物画を楽しんでいるグループがある。市民学芸員の有志で構成される『葉月の会』だ。会員は30~60代の8名。4年ほど前、万葉集に詠まれた植物の絵を展示する『万葉のいろ』展が同館で開かれた。その折りに行われた植物画の1日体験講座の講師『日本植物画倶楽部』の瀧良子さんと、参加者の意思により発足した。月に1度の集まりは、それぞれに持参した植物を透明水彩絵具で描くとともに、お互いの絵を見せ合ったり瀧さんにアドバイスを求めたりといった情報交換の場でもある。「植物の細部まで観察するので色々な発見がある」、「日頃から道端の草花をよく見るようになった」と会員の皆さんは目を輝かせる。
 「植物は生きている。寿命があるのはもちろん、花は光の方を向くなど時間とともに少しずつ動きがあるので描くスピードも大事」と瀧さん。一方で花と球根を1枚の画用紙に収めたい場合などは、球根を先に描き、花が咲くのを待ってから、あらかじめ空けていた余白に花を描き入れたりもする。また、「一番難しいのは色作り。何色もの色を混ぜて自然の色に近づけようとするが、全く同じ色を作ることはできない。それがまた面白いところでもあります。自然の持つ素晴らしさ、奥深さを感じます」と植物画の魅力について語った。
 同博物館がある袖ケ浦公園内には、自然に囲まれた素晴らしい万葉植物園がある。ヤマブキ、ネコヤナギ、キキョウにアジサイのほか、白い花を咲かせる希少なムラサキなどが四季折々に、散歩者の目を楽しませている。会員たちはいつも同園で剪定や植え替えなどの手入れを行ってから、絵を描く作業に入る。瀧さんは「みんな植物が大好き。植物への愛情、自然への愛着があるからこそ、いい絵が描けるのです」と微笑んだ。
 『葉月の会』の絵は毎年11月~12月に、アクアラインなるほど館ロビー展『ソデフローラ 植物画展』で披露している。今年の開催もお楽しみに。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…
  2. 【写真】教室の講師と子どもたち  JR浜野駅前と五井駅前でダンススタジオを経営する堀切徳彦さんは、ダンス仲間にはNALUの…
  3.  市原市不入の市原湖畔美術館にて、企画展『レイクサイドスペシフィック!─夏休みの美術館観察』が7月20日(土)に開幕する。同館は1995年竣…
  4. 【写真】長沼結子さん(中央)と信啓さん(右) 『ちょうなん西小カフェ』は、長生郡長南町の100年以上続いた小学校の廃校をリ…
  5.  沢沿いを歩いていたら、枯れ木にイヌセンボンタケがびっしりと出ていました。傘の大きさは1センチほどの小さなキノコです。イヌと名の付くものは人…
  6. 『道の駅グリーンファーム館山』は、館山市が掲げる地域振興策『食のまちづくり』の拠点施設として今年2月にオープン。温暖な気候と豊かな自然に恵…
  7.  睦沢町在住の風景写真家・清野彰さん写真展『自然の彩り&アートの世界』が、7月16日(火)~31日(水)、つるまい美術館(市原市鶴舞)にて開…
  8.  子育て中の悩みは尽きないものですが、漠然と考えている悩みでも、種類別にしてみると頭の整理ができて、少し楽になるかもしれません。まずは、悩み…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る