廃屋に魅せられて 写真展『廃屋』開催

 数年前から廃墟がブームになっており、廃校となった学校や廃線になった鉄道の跡を巡る人たちが増えてきているという。そんな風潮の中、房総でも各地で目にするようになった廃屋を撮影しているのが、市原市在住のカメラマン、加藤清市さん。
 10年ほど前から、その存在が気になり撮影するようになった。「今でもそうだけど、廃屋を探し求めて撮影に行くのではなく、他に被写体があって、そのついでに廃屋を見つけると撮るっていうのが私のスタイル。だから廃屋に関しては市内に限らず県内各地、特に君津市やいすみ市で撮ったものが多いね」と話す加藤さん。廃屋の魅力について、「何故、惹かれるのか?それは、その家に暮らしていた人たちの心が残っているような雰囲気が漂っているからだろうか。また、壊れてしまってはいるものの、家の立派な造りや家具を見て、昔は栄えていた家なんだろうなと思い、栄枯盛衰を感じるからか」と想いをめぐらせる。
 そこだけ時間が止まったような、非日常的な空間。かつて生活の中で使われていたモノたちが、打ち捨てられた光景。長い間、雨風に晒されて色褪せ赤錆びたトタン屋根、ささくれだった木製の雨戸…。どんな暮らしが営まれていたのだろう。廃屋の一つひとつに物語があり、見る者の想像力をかき立てる。
 だから、廃屋をテーマに撮りためた千点以上の写真の中から一連のストーリーを構築できるものを選び抜き、写真展を開こうと考えた。
 加藤さんは「絞り込んで選んだ40点にストーリー性をもたせ、大きな組み写真のようなイメージで展示したい。まず、会場に入り見ていただくのは、門しか残っていない廃屋跡の作品。そして最後に廃屋と桜を撮った作品を。家には人が住まなくなったが、家の前の桜の花は変わらずに咲く。こうした作品群を眺め、ノスタルジーを感じるなど、何か心に響くものがあったら嬉しいですね」と語る。
 更に、「きれいな写真を撮る人は大勢いる。だから自分は敢えて汚くも感じられるものを撮った。きれいなものを撮るだけが写真じゃないというメッセージを込めてね」と茶目っ気たっぷりに笑う。
 写真展は、つるまい美術館(市原市鶴舞303、鶴舞郵便局前)にて、6月30日(木)から7月14日(木)まで(10~17時)開催。(月)休館。加藤さん在館日は初日・最終日・(土)・(日)。

問合せ つるまい美術館
TEL 0436・88・4001

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