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目標は最高地点 新たなレジェンドを紡ぎたい
- 2016/9/2
- 市原版, シティライフ掲載記事
元なでしこジャパンDF
帝京平成大学女子サッカー部新監督 矢野喬子さん
日本中を沸かせた2011年のFIFA女子ワールドカップドイツ大会や2012年のロンドンオリンピックなどで活躍した元なでしこジャパン選手、矢野喬子さん(32)が、今年3月、帝京平成大学女子サッカー部の監督に就任した。
昨年、創部3年目にして早くも関東大学女子サッカーリーグ1部へ躍進した同サッカー部。強化指定部活動として大学から全面的なバックアップを受け、前監督が築いた礎を引き継ぎ、新たな伝統を積み上げていく役割を果たすことになった。
2012年シーズン引退後、矢野さんは「多くのことを学ばせてもらったサッカーでこれまでの恩返しがしたい」と日本女子代表の試合解説や指導者としての道を歩んできた。しかし、監督という立場は初めて。なでしこジャパンの佐々木則夫前監督の言葉を「選手のときとは違う角度からかみしめています」と話す。
「選手を型にはめたくない。上から指示を出すボス型ではなく、選手を良い方向に導き、後ろから支えるリーダー型が理想」と自分の目指す監督像について明確な言葉で語る。「同じ言葉や指導法でも一人ひとり受け取り方は違います。100人いれば100通りの言い方で声をかけたい」。選手には「監督就任以来、日々、選手たちが進歩するのを実感しています。目の前の結果に満足せず、世界に挑戦するための4年間であってほしい。目指すのは最高地点。帝京平成大学の名前を千葉に、日本に、世界に響かせたい」と大きな期待をかける。
選手たちは親しみを込めて矢野さんを「きょんさん」と呼ぶ。「まあ、監督だとは思ってないでしょうね」と頬を緩める矢野さん。日本サッカー協会の公式試合もできるという人工芝のフィールドに出ると、すぐに選手たちが寄ってきて、まとわりついたり、冗談を言ったり。矢野さん自身も生き生きとした表情で走り回る。
コーチの當銘(とうめ)美幸さんによると矢野さんは「ユーモアのセンスがあってクリエイティブな人」。3年生の土谷葵さんは「一人ひとりとコミュニケーションを取ってくれて、優しい。練習の目的をはっきり教えてくれる」、同じ3年生の渡辺菜摘さんは「毎日メニューがちがうので楽しい。生き生きプレーできる」、2年生の大竹麻友さんは「意見を言いやすく、それを受け入れ返してくれる」とすでに選手たちの信頼は厚い。
ウォーミングアップは互いに名前を呼び合ってハイタッチ、目が合ったらジャンプして肩と肩をぶつけ合う、しりとりをしながらパスなど。コミュニケーションにも配慮した練習。見ていても選手に笑顔が絶えず楽しんでいるのが伝わってくる。2人1組が対戦し、残りの一人がボールを持つ側に付くゲームでは、他のグループのゲームについて良い点、悪い点について意見を言いあっていた。
矢野さんは選手指導に留まらず、すでに開いた元なでしこ選手によるサッカー教室ほか地域貢献のアイデアも温めているそうだ。実現は未知数だが、「サッカースクールと動物の殺処分を減らす運動をかけあわせたいとか、障害者スポーツの場を提供したいとか。人と同じことはやりたくない。大学を困らせているかもしれません」と笑う。生き物が大好きというので、サッカー以外の楽しみを聞くと「今はチームのことで頭がいっぱいです」と顔を引き締めて答えた。
幼稚園の頃、5歳年上の兄のやっているサッカーの練習についていくうちにいつの間にかボールを蹴っていた。当然、野球やほかのスポーツも万能だったが、「なぜかサッカーに戻っていました。サッカーはボール1個で100人とでも遊べる楽しさがあります」と魅力を語る。当時、女子サッカーは黎明期。苦しいこともあったが、「人見知りで引っ込み思案な自分をサッカーが成長させてくれました」。今の子どもたちには「夢を描いたら、とにかく目標に向かって練習するのみ。失敗を思い出して、へこんでいる場合ではないと伝えたい」
7月末、同部は千葉県女子サッカー選手権大会(皇后杯地区予選)に優勝し、皇后杯全日本女子サッカー選手権大会関東予選への出場を決めた。8月末からは関東大学女子サッカーリーグ1部が開幕。9試合を戦う。「ぜひ試合を見に来て下さい」と矢野さん。地域の応援を待っている。
問合せ 帝京平成大学 千葉キャンパス 當銘さん
TEL 0436・74・5605