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ぶっちゃけ寺住職の講話 煩悩を味方に
- 2017/2/17
- 市原版, シティライフ掲載記事
昨年12月、市原市の南総公民館で同館主催講演会『仏教版お利口のかべ|心の発達と仕組みを考える』が開かれた。講師は駒沢女子大学人文学部教授の千葉公慈さん(52)。養老渓谷駅近くにある曹洞宗宝林寺の住職で、寺は江戸時代の小説『南総里見八犬伝』ヒロインのモデルといわれる里見種姫の墓があることで知られる。聴講したのは同館主催の『生き活き講座』(全10回)の受講者と一般参加者155人。
「細川たかしさんの生歌を聞く機会がありました。素晴らしい方ですね」と千葉さんは出演するテレビ番組『坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺』の共演者のエピソードから語り始める。「歌は言葉が正確に伝わり、覚えやすいですね。お釈迦様の言葉を伝えたお経も韻律を踏んだ美しい言葉で広まったのだと気づきました」
お釈迦様の名前『仏陀』はヒンズー語の『ブッディ』が語源で、気づくという日常的に使われる言葉。つまりお釈迦様は偉大な真理に気づいた人というだけでなく、小さな気づきもたくさんあった人で「人間とは何か、憎しみ、苦しみを産む心がどういう仕組みになっているのかをつきとめたいと考えた人です」とその教えを語る。
お釈迦様が生きていた頃、日本は縄文時代。千葉さんは「ドングリやイノシシを食べていました。今も食べますよね」と土日祝日に養老渓谷駅でイノシシ肉を使った屋台が並ぶ『いっぺやde養老渓谷』をさりげなく宣伝し、市のいちはら観光大使であることも忘れず笑いをとる。
煩悩とは心の迷いと思われているが、習性という意味があるそうだ。「『貪瞋痴を滅せよ』とは、むさぼり、嫉妬、自惚れの3つの煩悩を滅せよということ」。滅は滅ぼすではなく、習性をコントロールし、乗りこなしなさいという意味。煩悩を持つことはたくましく生きること。「明日良くなりたい、あの人のようになりたいと思う、自分を進化させる良い意味の欲を繰ることです」
人間は良い面と悪い面の両翼があってはじめて飛ぶことができる。西遊記の三蔵法師が貪瞋痴の象徴である猪八戒、孫悟空、沙悟浄を味方にしたことを引用し、「煩悩即菩提。煩悩を敵とみないで味方にするのです。利口な生き方とは煩悩を利用すること。この発想の転換を気づきといいます」と話す。
爆笑問題、ドラえもんなどの話を織り交ぜ、「お経を正しく伝えたい」と仏教を解きほぐす千葉さん。聴衆は楽しい講話に惹きこまれたまま時間切れ。終了を告げると、まだ決まっていない次回講演への期待を込めて、会場から大きな拍手が起きた。
参加者からは「もっと聞きたい」、「語源がわかった」などの感想が多く聞かれた。60代の女性は「毎日の小さな出来事に悩むが、お話を聞いて心が落ち着いた」、男性2人は「謙虚にならなきゃなあ」とそれぞれの心の気づきを語った。 (荻野)