地域にある資源の循環で活性化・みんなが生き生き

高秀牧場(いすみ市)

 いすみ市須賀谷の畜産団地で高秀牧場を営む高橋憲二さん(52)は『小清水菌』というバクテリアを活用した環循環型酪農を実践している。循環型酪農とは家畜などの糞尿を堆肥にし、その堆肥を使って野菜や果物を栽培、それらを人の食材や家畜の飼料などにするなど、ある一定の地域内で循環していくもの。自然の生態系に近いサイクルなので、地球環境にも優しい。
 高橋さんは八千代市の酪農家に次男として生まれ、自身も酪農をやりたくて北海道の酪農大学に進学した。その後2年間カナダの牧場で研修し帰国。結婚を機に23歳で今の場所で酪農を始めた。広い敷地を有する高秀牧場では牛舎や放牧地の他に畑があり、牛の糞尿を堆肥として飼料用のトウモロコシや牧草を育て、それを牛に食べさせる事ができた。しかし毎日、一定量出る糞尿に近隣の牧場では処理がうまくいかない所もあった。そこで18年前、「糞尿を宝に変えよう」と、5軒の牧場と『有限会社アイデナエンタープライズ』を設立し、糞尿処理施設を作り、『小清水コンポスト』を生産、流通させることにした。この組織が他と違うのは、尿も液肥にしていること。一般に糞は堆肥にして運べるが、液肥は運搬の面で地元消費が大前提。毎日10tにもなる尿を使った液肥を地元の農家の人に使ってもらいたいと考えた。
「昔はどこの農家にも牛が2~3頭いて、副収入源として牛乳を売り、糞を田んぼに散布していました。一輪車で堆肥を運び田んぼにまく作業は大変で、高齢になったら無理。どんどん牛を手放し、扱いが楽な化学肥料を使った米作りになっていました。その結果、昔から千葉三大銘柄と言われた国吉米の食味が低下し、地元の稲作農家も私たちが生産する堆肥を使った農業を考えるようになりました。しかし最初は微生物資材を使うことが理解されず、相当なバッシングを受け変人扱いされました。アイデナエンタープライズの仲間の励ましが無かったらここまでやってこられなかったと思います」と高橋さん。
 この自然界から培養された小清水菌は糞尿を完熟堆肥化し糞尿の臭いまで軽減させる働きがある優れもの。これを土に混ぜ込むことで牧草や野菜がよく育つ。稲も根が張るので、田んぼに足を踏み入れてもぬかるまないという。そして高橋さんらが生産する堆肥の効果が徐々に表れ、昔ながらの美味しい米が育つようになり、4年後、BM米「万喜米」として売り出すことができた。
 折しも原油高でトウモロコシを原料とするバイオエタノールの生産で輸入していた飼料の値段がつり上がったのと、日本人の米離れが進み、余った米を飼料にするという政府の方針もあり、高橋さんは自分たちで稲作農家の田んぼを借り堆肥を使って飼料米や牧草を作ることを提案した。最初は忙しさから田んぼまでは手が回らないと、仲間全員からの反対はあったものの、順調に作付けが増えていった。
 あまりの忙しさから高橋さんが体調を崩したこともあり、今はその作業の殆どを地元の農家に任せ、収穫した米や牧草、稲わらを酪農家が購入することにしている。農家も米の収穫が終わった後、堆肥を入れ牧草の種を撒くなど水田をフル活用した結果、収入増加につながり、地元が活気づいてきたという。こうして今では地域を巻き込んでの地域循環型酪農が成立するようになってきた。
 高秀牧場は牧場体験として牧場見学や乳搾り、ブラッシングやバター作り、牛乳の試飲が出来る。また酪農に興味がある人を対象に宿泊型の酪農体験も行なっており、実際に酪農家の生活をすることで、本気で酪農経営を考えてもらっている。家族や少人数のスタッフで運営しているため、体験は事前の予約が必要だが、営業時間内に牧場を訪問するのは自由。牛舎内には入れないが放牧地に沿った道を散歩できるので、時間によっては放牧中の牛が見られるかもしれない。朝搾った質の良い牛乳と地元の季節の野菜や果物を使ったジェラートやチーズを敷地内にある施設で販売しており、飲食もできる。職人が作るチーズを使ったピザや牛乳を使ったホワイトカレーも好評。店内には大きな牛のテーブルや牛に関する本やぬいぐるみもあり、子どもも楽しめる。営業時間は10~17時(ラストオーダー16時)木曜日が定休。

問合せ 高秀牧場
TEL 0470-62-6669
千葉県いすみ市須賀谷1339の1
http://www.takahide-dairyfarm.com

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