元国鉄マン アートに目覚める

東日本鉄道OB会 『ロウ画の会』

 「堅牢な絵肌にシンプルな線が魅力的。絵心がなくても仕上がりが立派に見えます」と話すのは『ロウ画の会』代表の高澤功さん。JRを定年退職した東日本鉄道OB会市原支部の会員のうち60代から70代後半までの7名が「高齢になり外出が困難になっても楽しめる趣味を持ちたい」と公民館で水彩画を教える高澤さんを中心にロウ画を楽しんでいる。月1回第3水曜日9時半から11時半まで下宿公民館にて集まり、絵を制作し、終了後は「元職場の役に立ちたい」と五井駅前の清掃ボランティアを行う。昨年末には市原市更級のギャラリー和更堂で2回目の展覧会を開いた。
 ロウ画とは、第二次世界大戦中東欧で絵の具が不足した時代に生み出された絵画の技法。硬い段ボール(黄ボール)にロウソクとクレヨンを満遍なく塗り、鋭利な鉄筆やキリで削って線を描く。上から全面に墨を塗り、乾いたら全てのロウを削り取ると、絵として線が残る。最後に透明ニスを塗って完成する。
 高澤さんは「画材はロウソク、クレヨン、墨汁と身近なものばかり。油絵でも出せないような独特な厚みのあるマチエールが特長。色彩感覚に自信がなくても線だけで描けます」とロウ画の良さを説明する。 「引退した高齢者は社会貢献したり、自分の生活を充実させたりしなければなりません。私自身、退職後何もせずにいて子どもに怒られ、書道、俳句といろいろチャレンジしました。透明水彩画を画家のムラカズユキさんに師事したのは15年ほど前です」ときっかけを話す。会は5年前にスタート。「描くだけではなく、展覧会を開催するとメンバーの顔が生き生きしてきます」
 はじめは下絵をもらって、トレーシングペーパーで写して描くだけだったという小出晃さん。「入口は簡単。素人でもできました。ニスを塗るとさらに良くなります。絵を描いたのは小学生の時以来でしたが、妻に見せると褒めてくれました」と笑う。本澤曻さんは「僕は見せたことないなあ」と照れたように言う。「子どもの頃から絵を褒められたことはないからね」。でも「画廊で見ると見栄えします。見に来た娘が上手といってくれました」と少し嬉しそうだ。展覧会を開くことになり、鳥海利雄さんが特技を生かし廃材を使って額を作った。石川一廣さんは「青いロウを塗り、模写しました。昨年はモノクロの作品だったが、今年は色を使い、明るくなりました」と自慢の作品を紹介する。
 「高澤さんの厳しい指導のもと描いています」と誰かが冗談を言うと、「言うことは聞かないけどね」と高澤さんが笑って答える。「墨が乾かないうちにロウを削り始めた人もいました。でも仕上がりは良かったですよ」というと支部長の小出博司さんが「効果を予想していたんだ」と反論し、みんなで笑い合う。その姿からは気心の知れた仲間同士の楽しさが伝わってくる。
 ロウ画は工夫しだいで白い紙、白墨、透明水彩を使うなどバリエーションが多い。高澤さんは「いろいろな素材でおもしろい効果が出せます。今後はそれぞれの個性を生かした絵を描いてほしい」と期待する。和更堂のオーナー相川浩さんに勧められ、「今年は市原市美術展覧会を目指す」そうだ。
 「国鉄に勤めていたから絵は固いけど、チームワークはあります」。メンバーの現役時代は高度経済成長期だった。運転手や車掌、保守点検整備など職種は違っても国鉄一家と呼ばれていた者同士。ストライキや労働闘争、様々な歴史的な出来事が起こるなか公共交通を止めてはいけないという気持ちで列車を走らせてきた。「皇太子ご夫妻を乗せた列車を運転したことがある」、「学生運動が激しかった時期に機動隊に守ってもらいながら電車を走らせたりしたこともあった」、「民営化のときにはそごうに販売の研修に行ったなあ」など共通の話題もすぐ出てくる。「みんなで集まっておしゃべりするのが楽しい」と渡辺敏雄さんが言うように絵を描くことより一緒にいる時間を大切にしているようだ。
 同会市原支部は会員75名と遺族や家族などの準会員150名以上が所属する。会員たちの多くは現役時代から市原市で暮らしてきた。会員同士の情報共有化を図る会報『JROB会市原だより』を2カ月に1回発行し、「頼りになる、生きがいのある楽しいOB会」としてそれぞれボランティア活動、防犯や町会活動などで地域に貢献している。市原市民に定着した『お座敷列車による旅』(一泊旅行)も同会の企画である。

問合せ 高澤さん
TEL 090・4828・9131

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