『いちはら』をもっと知って、学んで、楽しんで

 3月21日(祝)、市原市勤労会館(youホール)で開催された平成29年度市原市生涯学習フェスティバル。同イベントは平成23年度より学習意欲の向上や生涯学習の啓発、学習者間の交流などを図ることを目的に、学習成果の発表の場として設けられている。午後1時半からのミュージックリサイタルに参加したバンドは公募により決定した5組。ロックやジャズ、金管楽器などジャンルの異なるバンド達が会場を盛り上げた。
 帝京平成大学ボランティアサークルの『ALIVE』は、可愛らしい女子3名が透き通った声と穏やかな音で聴衆を魅了。長年の実績をもつ懐メロック(懐かしい歌のロック)が売りの『STEED』は美空ひばりや尾崎紀世彦を軽快に歌い上げ、拍手喝さいを浴びた。また他会場では、パラリンピック競技種目のボッチャや、市民大学卒業生による子ども達の自主学習をサポートする団体である『まなび舎こすもす』によるお茶体験や絵本の読み聞かせがレクリエーションとして行われた。
 そして、フェスティバルで最も注目を集めたであろう、いちはら市民大学特別講座『川と鉄道と私』には約280人が訪れ、1時間半の講座を楽しんだ。小湊鉄道沿線と養老川流域に見るふる里市原の魅力と題したトークショーの講師は、写真家の石川松五郎さん、鉄道写真家の中井精也さん、宝林寺住職の千葉公慈さんの3名。司会者から市原の魅力を問われた3名は、それぞれ小湊鉄道や養老川への溢れんばかりの愛を語った。
 「小湊鉄道はタイムマシーンのようです。養老渓谷から五井の都市部に向かって走ると、里山や奥山、工場や商業地帯とまるで明治、大正、昭和と時代を進んでいく感じです」と話す千葉さんは、養老渓谷駅からほど近い場所に寺をもつ。幼少時代から生き続けてきた市原で、最も魅力的なのは春の里山だとか。「昔は山桜の間につつじが咲き、一面の菜の花の中を走る小湊鉄道が加わると最高の風景でした。つつじは減ってしまいましたが、石神から見える大パノラマは今も春はオススメスポットです」と、思い返すだけで幸せそうだ。
 トークショーは、石川さんと中井さんの撮影した写真をスライド式で上映しながら、五井から養老渓谷まで鉄道に乗車しているような感覚で進んでいく。「鉄道の型だけでなく、写真を通して旅情を感じて欲しい」という中井さんが撮影したのは、昭和を彷彿とさせる馬立駅の花で彩られた日常風景や上総久保駅前の黄色に染まった大きなイチョウの木。「飯給駅前ではボランティアで地元の方が水田に水を入れたりライトアップしてくれたり。夜に最終の小湊鉄道を撮ると、水鏡がとても幻想的。こんなに地元民と鉄道の距離が近い所は他にない。美しい風景のある所は、住んでいる人の暮らしも美しい」と絶賛した。
 石川さんは、養老川に関する写真集を2冊出版しており、「上流から下流まで四季折々や時間で異なる顔を見せる養老川がもつ自然と歴史が大きな魅力」と語る。今では見られない西広堰の木造の水門や水路を造った跡だという上総久保駅前の川まわしなど時の流れを感じさせる作品は、会場に懐かしさを想うため息を起こさせた。
 「私自身、小学生から社会人の通勤まで20数年小湊鉄道を利用していました。今も桜や菜の花がとても綺麗ですが、もう少しスパイスを加えてみてもいいかもしれません。各駅で花の種類を変えて満開にしたらキャッチフレーズのようになるかも。チバ二アンも盛り上がっているので、ビジターズセンターを作って中学生とかが簡単に説明できれば、より理解も深まり親しみが湧くのではないでしょうか」と、石川さんは提案も交えた。
 市原市最高峰の大福山からの雲海や上総大久保付近の雪の中を走る小湊鉄道。養老川上流の支流となった小さな滝や一面の菜の花畑。合計15枚の写真を見て、「水や空気、人、町など自然に満ちた市原に触れて、忘れかけていた心を呼び覚まして欲しいです。地元の人間として、これからもお手伝いしてきたいです」と、千葉さんは話した。たとえ時が流れても、自然が作る風景の価値は決して変わることはないのだろう。あなたが想う市原の魅力を探しに行ってみてはいかが。

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