子どもの頃お世話になった博物館に恩返しを

自身のコレクションを企画展 / 写真↑ 石井更幸・英美夫妻

 「袖博」の名で親しまれている袖ケ浦市郷土博物館で、10月14日(日)まで『地図を持って出かけよう!石井更幸コレクションに見る内房の交通と観光』が開催されている。同館で個人のコレクションを企画展示するのは初めてのこと。コレクションを収集した石井更幸さん(45)が、「子どもの頃にお世話になった博物館に恩返ししたい」と、袖ケ浦市郷土博物館に数年前から企画展示を提案していた。そして今春、充実したコレクション内容と企画の趣旨に賛同した同館が開催を決め、8月4日から展示がスタートした。
 展示は『えらべるトラベル のびる鉄道・ひろがる世界』、『地図?絵画?楽し・美し、鳥瞰図』、『海!山!お寺に神社!リゾート地房総のPR大作戦』、『戦争の足音、そして戦後の復興の中で』、『平成、次の時代に何を残せるか』と、5つのジャンルから構成されている。展示された地図や鳥瞰図、時刻表、パンフレット等から、東京湾アクアラインの開通や圏央道の整備により、交通や観光の発展を遂げた千葉県の変遷を知ることができる。
 袖ケ浦市で生まれ育った石井さんは、先天的に皮膚や毛髪、目などのメラニン色素が欠乏したアルビノだ。肌や髪が白く弱視で、子ども時代は黒板や教科書の文字が見えづらく授業についていけず、勉強は好きではなかったという。でも、母親が連れて行ってくれた袖ケ浦市郷土博物館で様々な展示品等を見て、閉ざされがちだった自身の世界が一気に広がったという。地域の歴史に関心を持つようになり、近所で見つけた土器のかけらを持ち込み、当時、学芸員で現在は館長を務める井口崇さんに見せて、その土器に関する色々な事柄を教えてもらったりもした。
 小・中学校は普通校に通ったが、高校は盲学校へ通った。卒業後は地元のコンビナート企業へ就職。石井さんは「当時はアルビノという言葉さえ知らずに、何故、自分は皆と違うのか悩みました。だから26歳で初めてアルビノという病気なんだと知ったのを期に、同じように悩む人がいるのではとネットで探し交流会を立ち上げました」と話す。そして15年以上、各地で交流会を開催したり依頼があれば無料で個別に相談に応じるため出向いたりした。

 そうした支援活動が評価され、2010年、日本青年会議所が主催する『青年版国民栄誉賞』の人間力大賞において会頭特別賞を受賞。2017年には著書『アルビノの話をしよう』が日本医学ジャーナリスト協会による書籍部門・優秀賞受賞。ネットの浸透により、アルビノについて相談にのったりアドバイスできる人たちが増えたことで、自分のために使える時間ができた石井さん。
 3年前に長崎県から嫁いできた奥様、英美さんが地元で友達がつくれるようにと博物館の体験教室への参加を勧め、石井さんも再び博物館を訪れることになった。博物館が学びの場だった子ども時代。是非、なにか恩返しがしたいと考えた。そうして思いついたのが「他の博物館ではやったことのない企画をと。県内の博物館で行われた企画展を調べ上げ、郷土の観光と交通の歴史の流れを鳥瞰図を目玉にした企画をやりたいと思った。更に展示品もどこの博物館も所蔵してないものを集めた」とのこと。

「旅は娯楽ではなく学びの場」

 3年近くかけて神田の古書店やネットで購入して集めたコレクション。「博物館的にイチオシなのは、大正の広重と呼ばれた絵師、吉田初三郎の原画を元に発行された鳥瞰図、千葉県の三部作、海光・霊場・情味。この3点を揃えているのは全国でも珍しいのでは?個人的にイチオシなのは、千葉県で活躍した地図製作者、峰庫治の鳥瞰図、千葉県の観光と産業」。会場内にはHOゲージが設置され、9月16日(日)・10月7日(日)の10時30分~11時30分、14時~15時に走らせることができる。
 高校時代、親が山登りに連れていってくれたり、教師が都心にある触れる作品を展示するギャラリーに連れていってくれたことが、旅への好奇心をかき立てた。「また行きたい!今度はひとりで」と再度出かけた。地図を買い県内を旅した。九州一周もした。社会人になると夜行列車に乗り全国を旅した。「博物館では自分の知らない幅広い知識や情報を得られたが、旅も未知の世界を知ることができる。人や食、文化との出会いがある。だから自分にとって旅は娯楽ではなく学びの場。旅先で必ず訪れるのは寺社仏閣や博物館、資料館。国内だけでなく海外へも10カ国以上旅しました。そうした経験や子どもの頃に通いつめた博物館での体験が、今回の企画を考えたり資料集めに役立っていると思う」と石井さん。
 今回の企画は、少年時代から「袖博」に親しみ、成人後もボランティアや資料提供者として、共にあり続けてくれる市民と博物館の関係を形にしてみる試みでもあるという。老若男女問わず、三世代でも楽しめる企画。是非、足を運んでみては。

問合せ 袖ケ浦市郷土博物館
TEL 0438・63・0811
開館時間9~17時。休館日(月)・(祝)の翌日。が祝日の場合は開館。入場無料。関連イベント。9月30日(日)13時30分~。講演会『地図製作へのこだわり 峰庫治の世界』。10月13日(土)11時~。展示解説会。同企画続編として10月27日(土)から展示資料の裏側を見せるリクエスト企画『ウラ見せ!』を開催。

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