
現在、歯科保健の分野では、高齢者においても歯の喪失が10歯以下であれば食生活に大きな支障を生じないとの研究に基づき、生涯にわたり自分の歯を20歯以上保つことにより健全な咀嚼能力を維持し、健やかで楽しい生活をすごそうという8020(ハチマル・ニイマル)運動が提唱・推進されている。前述したように8020(ハチマル・ニイマル)運動が推進されている一方、50歳以降では平均して2年に1本強の歯が喪失しており、60歳ですでに17.8歯と20歯を下回り、80歳以上の1人平均現在歯数は4.6歯となっている。
歯の大切さは、「歯を失ってからわかる」とよく言われます。まず「咀嚼(そしゃく)」があり、消化のための第一段階として不可欠な作用です。次に「嚥下(えんげ)動作」で、上下の歯をしっかりとかみ合わせ、下あごの位置を安定させることをいいます。歯が失われてしまうと嚥下動作ができなくなり、食べ物を飲み込むことが困難になります。次に「異物の弁別」があります。食事中、異物を噛んだ経験があるかと思います。この時、不快感とともに反射的にあごが開いてそれより強くかまないのが普通です。このように歯は嚥下してよいものとそうでないものを判断する役割をもっているのです。また、食品の硬さ、軟らかさ、粘度の程度をかみ分け、うま味の差を感じるのにも大きな役割を果たしています。このうま味は、俗に歯ごたえというもので、食欲をそそられる原因にもなります。さらに、「発音」です。これは、歯を喪失している人、特に前歯が喪失している人ははっきりと発音が出来ません。その他、美しい顔の表情をつくるなど歯の働きはいろいろとあって、健康的な生活をするうえで欠かせないものばかりです。歯が悪くなると消化器官に負担をかけ、栄養の吸収が悪くなったり、また虫歯や歯周病などが原因で二次的に目や心臓、ジン臓、皮膚、関節などが病気をおこしたりしてしまうこともあります。
「メインテナンス」を忘れずに!
メインテナンスは、「治療によって得られたお口の健康な状態を持続させ、再発を防止すること」を目的としています。毎日各自が行っている歯ブラシ、デンタルフロス、歯間ブラシなどを使ったセルフケアが重要なのは当然ですが、定期的なプロフェッショナルケアで補ってあげるのがメインテナンスです。治療期間中は、一生懸命ブラッシングをしますが、治療が終了するとサボリ気味になります。むし歯や歯周病はいわゆる生活習慣病ですから、日頃の生活習慣(ブラッシング習慣)が大切です。長続きさせるコツは、テレビを見ながら、あるいは新聞を読みながらブラッシングをする「ながら磨き」をすることです。無理なく続ける方法を各自が工夫しましょう。
このように歯は、日常生活のうえで、重要な役割を果たしています。もし、歯に異常がある場合は、すぐに専門医に診察を受け、いつまでも健康な歯を保ちましょう。