【市原市】牛久八坂祭 史上初! 魅力と迫力の三町叩き合い 〈 7/26(金)18時~・ 27(土)17時~ 〉

 時は江戸時代、夏の夜の牛久・八坂神社。ピーヒャラドンドコ祭囃子の音、行き交う若衆の活力みなぎる声、浴衣姿の祭り好きな人たちで、参道はさぞ賑わっていたことだろう……。時を重ね令和時代の今年もまた、祭りを愛する人たちの胸騒ぐ季節がやってくる。牛久八坂祭の本番に備え、地域の公民館に牛久上町、仲町、下町の各町を代表する『三町叩き合い』の役員たちが集まった。
 昨年までの八坂祭では、初日に上町と仲町が、二日目に仲町と下町が『喧嘩太鼓』を行っていた。向かい合って叩き合い、お客さんが向いている方が勝ち、先に引いた方が負けという暗黙の決まりもあるが、あまり勝敗にはこだわらず、お楽しみや盛り上がりのために打ち合う意味合いが強いとのこと。その喧嘩太鼓が、今年は新たな試みの『三町叩き合い』として披露される。

 「各町にそれぞれお囃子があります。仮名で呼んでいるのですが『さんびゃく』『しんばか』『かけばち』という三曲です。下町にだけはさらに『かまくら』があります。共通する三つの祭囃子は言っている内容は同じなのですが、叩き方や音が違うんです。どの曲順でやるかは互いにわかりませんが、三町並んで同時に叩き合ってお客さんがどこを向くか、懸命に奏でるわけです。着用する衣装も町ごとに特色があります。勝ち負けより、そんな三町の違いを見に来た人に楽しんでもらいたいのが本意です。町の境界線があって、それを越えるのは良くないこととされてきました。親心で心配してくれる氏子総代と折に触れて話し合いを重ね、ようやく実現にこぎつけたので、この盛り上がりを見に来てほしいです」と役員の一人、佐野美咲希さん。祭りの組織は、上に向かって、氏子、進行(山車や若衆を動かす人)、頭(若衆頭)、町代(町の代表)、氏子総代と続く。佐野さんは数年前『頭』を、一昨年『町代』を務めた。どちらも女性で初の抜擢だった。「終わった後、私のようになりたいって言ってくれた女の子がいて嬉しかったです。あの人のようになりたいと思ってもらえる人になりたいです」と語る真摯で前向きな人柄に、白羽の矢が立ったのだろう。

三町一体の『地域愛』

 他の役員も皆、祭りへの熱い思いを抱いている。鵜澤(うざわ)和樹さんは「三町叩き合いという初めての試みを皆さんに見に来てもらって、楽しんでいただければなと、そしてそこから地域が盛り上がっていけばいいなと思います」。物江(ものえ)陽介さんは「牛久商店街はシャッター街になっています。祭りを町の活性化に繋げたいです。牛久って面白いなって多くの人に思ってほしいです」。浅井大知さんは「町のことをやっているのは、ご先祖様からずっと続いていることです。自分が、その伝承の一部になっているんだと思うと胸が熱くなります。祭りに来てお囃子を聞いていただき、我々がやっていること、やろうとしていることを皆さんに見てほしいです。そして牛久の活性化に繋げたい。思いは声に、声は形にしたほうがいいってことですかね。子どもの頃、祭りで頑張る親父や、その同世代の人たちがかっこよく見えたので、自分もそういう存在でありたいと思います。子どもの数も減ってきていますが、牛久のことをやりたいって思う子どもが増えてくれると嬉しいです」と話す。
 加藤綾香さんは、三町叩き合いが始まる時、それを伝えるアナウンスを担当する。祭りには音を止めてはいけない決まりがあるが、今回に限り全部止めて放送をしっかり聞いてもらうという。「数分ですが、周りの音が止んだ中でアナウンスをさせていただくので、その場が盛り上がるように上手くやりたいと思っています。令和という新しい時代の始まりに、新たな試みをしようという内容を伝えます。色々な物を読んで参考にしながら文章を作りました。皆と視点が違うかもしれませんが、これが私の祭への意気込みです」とのこと。
昨年の祭りの様子を尋ねると、保存した写真を見せてくれようとして、全員が各自のスマートフォンをチェックし始めた。やがて見入って、皆、楽しそうな表情をしている。浅井さんが「これが一番綺麗です!…というか、これだけが綺麗です!可愛かったなぁ…(笑)」と言って画面を見せてくれた。祭りの衣装を着て微笑む幼い頃の、浅井さんの妹さんの写真だった。それを聞いて「私も着物を着ている時が一番いいわよ(笑)」と佐野さん。準備中は和気あいあいと気の合う仲間が、祭りの間、「来いや!」「おう!」「ぜってぇー負けないかんな!」と叩き合いの好敵手に変わるという。

 市の無形文化財に指定されている牛久ばやし。越えられなかった境界線を越えて、止められなかった音を止めて、三町一体の叩き合いで盛り上げる今年の祭りには、町を活性化させたいと願う地域愛がいっそう強く込められている。牛久を舞台に市原の夏が今年も熱く、そして新しく盛り上がる。『祭り史上初の試み』を見に、ぜひ、お出かけを!
問合せ:市原市観光協会
TEL.0436・22・8355

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】スパリゾートハワイアンズ・ウォーターパーク ●千葉県立美術館開館50周年記念特別展「浅井忠、あちこちに行く~むすばれる人、つながる時…
  2. 【写真】五井小の歴史をたどるスライドショーの冒頭、紹介する子どもたち        昨年と今年は、創立150周年を迎える小学校が多数ある。1…
  3.  冬の使者と呼ばれるハクチョウ。シベリアなどから北海道を経由し、冬鳥として日本へ広く渡って来る。近年、地球温暖化の影響で、繁殖期と越冬期が暖…
  4. 【写真】坂下忠弘  来春3月2日(日)、市原市市民会館・小ホールで開催される『いちはら春の祭典コンサート2025』。市原市…
  5. 【写真】千葉県立中央博物館・御巫さん  11月24日(日)まで、千葉県立中央博物館で開催されている『二口善雄 植物画展』。…
  6. 【写真】川口千里(左)、エリック・ミヤシロ  日本を代表するトランペット奏者、エリック・ミヤシロを迎え、いま最も注目を集め…
  7. 【写真】うたと語り「今、この町でこの歌を」  毎年、夏に開催される『市原平和フェスティバル』。平和への祈りとメッセージが込…
  8.  今回は「映画音楽」特集の第1回。良い映画では必ず、音楽・主題歌が感動を与えてくれます。テレビCMでも使われる名曲もあり、何処かで聞いたこと…
  9.  3つの窓が並ぶカウンターはケヤキの一枚板。絵本コーナーは小上がりになっていて、壁際の本棚の横には籐の椅子。マンガが並ぶ2階の屋根裏へは細長…
  10. 【写真】布施知子《二重折りのヘリックス》2018  市原市不入の市原湖畔美術館にて、企画展『かみがつくる宇宙―ミクロとマク…

ピックアップ記事

  1. 【写真】五井小の歴史をたどるスライドショーの冒頭、紹介する子どもたち        昨年と今年は、創立150周年を迎える小学校が多数ある。1…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る