すべり込んだ夏

文と絵 山口高弘

 雨模様の休日、草野球の試合に選手で誘われました。野球未経験者なのに…でも僕は喜びました。日々の筋トレで体つきが少し変わったタイミング。成果を出すチャンスです。一歳の息子と妻に謝って、家を出ました。「パパ、ホームラン打ってくるって」妻が子を抱いて言いました。まだ言葉を話せない息子はキョトンとしていました。
 小雨の朝、試合開始。さっそく味方がたくさん点を取って僕の打席が来ました。さて、いっちょう柵の向こうまで飛ばそうか。大学の頃ソフトボール大会で活躍した記憶が蘇りました。やってやる、ブーン。「ストライク、バッターアウト!」空振り三振。ベンチの味方から笑い声が飛びました。「山口さん、当たれば飛ぶよぉ!当たればね!」
 次も三振、その次もゴロで凡退…おかしい。バッティングセンターと全然違う。そのうちチームは追いつかれて延長戦に入り、得点が必要な場面で僕に回りました。今こそ絶対に塁に出ないと。「ふんっ」打ち返しましたがショートゴロでした。「走れ!」味方の声に押されて全力で走って…間に合わない、諦めるか…と思った瞬間に、なぜか一塁に足からすべり込んでいました。「アウト!」駄目だった。左足が地面に巻き込まれて曲がっていました、痛い。歩けない。チームは、皆の活躍で何とか勝ちました。
 …腫れた左足とレントゲン写真を見てお医者さんが言いました。「足首の靭帯が3本とも損傷しています」ああ、なぜあの時すべり込んだんだ。頭と体が別々に動いた。色んな人に迷惑をかける日々の始まりでした。
 松葉杖で帰宅しました。ピョコピョコ痛がって歩く僕を、息子だけが笑ってくれました。『イダ、イダイ、アイタイ!ハハハハ!』息子が、初めて真似した言葉でした。

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