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私のひとり言 赤いほおづき
- 2019/11/21
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赤いほおづき
11月4日は晴天日の確率が1位とニュースで知る。朝から雲ひとつない爽やかな晩秋の午後、庭木の手入れも進み、庭の隅に目をやる。雑草のなかに僅か残っているほおづきが、いつもより青々と元気な姿で株の数も増えていた。
近づいてみると幾つか赤い実も見えた。網を被ったものがほとんどで、写真のようにきれいに透けて実の見えるものは少ない。実のあるものとないものがひとつの茎に連れ下がっている。此処(ここ)に目が止まり「萼(がく)はあるのに実がない、どうしたのだろう?」とシャッターを押した。
初夏のころは背丈も高く白い花がのぞき、真夏には萼も実を包んで赤く大きく育つ。我が家ではお盆になると提灯の代わりとする慣習から、仏壇に供えるため少し庭の隅に残してある。お店にたくさん並ぶほおづきと比べると、大きさでは負けるし、色も薄く華やかさもなく、地味な存在だ。
それでも庭の隅で実をつけるほおづきと、長い付き合いをしている。乾燥を嫌うのだが、今年の夏は比較的雨が多かったのか、 大きなほおづきをお盆に飾る事ができたように思えた。
8月が過ぎ月も変わると、間もなく9月から3度も続く体験したことのない暴風雨が直撃、全国広範囲で激甚災害となった。ニュースで目にするたび、これら悲惨な状況に心を痛めている。我が家も今まで体験したことのない出来事に遭遇し、被害は軽かったが、今後は心して自然災害と向き合い防災意識を高めなければと思っている。そんな時、ふと出合った赤いほおづきの野に生きる逞しさを思う。
『野に生きて語るほおづき今ここに』
・相川浩:市原市出身。三井造船で定年まで勤め、退職直後の平成20年、自宅敷地にギャラリー・和更堂を設立。多くの郷土の芸術家と交流する。「更級日記千年紀の会」事務局担当。