ミスター清二! はばたく折り鶴持って、どこへ行く? 土井 清二 さん【市原市】

 市原市君塚在住の土井清二さん(72)は、2009年6月に出光興産株式会社アグリバイオ事業部を62歳で退職。以降、バックパッカーで一人アジア諸国を巡っているつわものだ。

バックパッカー第一歩

 今では海外旅行中のコミュニケーションとして必需品になっている折り鶴を羽ばたかせながら、「私の旅には決まりごとがあります。必ず日本に帰ってくること。大体1カ月行くのですが、往復の航空券と入国直後の滞在場所のホテルを3日間のみ日本で予約して、残りは現地で決めること。安全を考慮しながらも、贅沢をしない宿泊場所で過ごすこと。日本人には接触せずに勇気を出して現地の人に話しかけること」と、土井さんは笑う。
 バックパッカ―を始めたきっかけは、退職してから2年半ほど経った時だった。現役時代とは一線を引き、妻と共に年に数回国内外を旅行する生活。北海道を車で1カ月かけて周遊するなど悠々自適の日々を過ごしていた。そんな折、「結婚してイギリスに住んでいる娘が妊娠したと連絡をくれたんです。でも、帰国はしないという。隣にいた妻がすぐに、それじゃあ私達が2カ月くらいイギリスに行こうと言った」ことから、話は広がる。
 男64歳、長年研究職に就き、渡航経験は出張で何度か行ったのみ。妻と行く海外旅行は添乗員同行のツアー、英語などほとんど話せないのだ。そこで、「語学学校に通うため、マレーシアに一人で1カ月留学することを決心しました。現地で私は、衝撃の青春を体験したんです」と、興奮混じりに話す。教室にはイエメンやイラン、トルコなど共通言語のない人種ばかり。なにより年齢は20代がほとんど。しかし、「先生の言葉を懸命に聞きとろうと集中し、テキストに目を走らせる姿が彼らには面白かったみたいで。お昼に誘ってもらうことから始まり、パーティや遊園地に行きとても仲良くなった」といい、卒業式には先生と抱き合って涙するほどの達成感を得ることができた。「短期だったので英語はそんなに上達しなかったけれど、物怖じしない自信をつけられました!」

世界は繋がっている

 イギリス滞在から無事に帰国した土井さんは、アジア諸国に想いを巡らせた。そして、英語力を磨くためにも海外に出て行こうと決意し、翌年に一人でフィリピンへ発った。「マレーシアは語学学校という目的があったのでよかったんです。一番つらかったのがこのフィリピンですね。3週間、町で話しかけるのも勇気がいる。会話のネタに折り紙を渡すけど、お礼を言われて終わってしまうんです」。ただ、すべて一人で成し遂げたのもこれが初めて。さらに一回り大きくなった自信がついた。そして2014年、3カ国目に訪れたベトナムで土井さんのバックパッカ―旅行に転機が起こる。「親戚に折り紙で羽がはばたく鶴や、動く大きな唇の顔、などを教わったんです。それを出会った人に披露すると、みんな驚きと同時にパッと笑顔になるんです」と、コミュニケーションに困らなくなったという。それからは日本にいる時も常にポシェットに入れて持ち歩いているとか。
 その後、カンボジアやラオス、タイやミャンマーを回り、昨年インドネシアに渡航して目標としていた国を制覇した。現地の乗り物に揺られ、折り紙を手に、道行く人と会話をする。同じ場所に滞在するのは3日まで。屋台や小さな店でご飯を食べ、店主や客と談笑する。時に遺跡を巡り、時にはその国の文化を目の当たりにすることもある。「昔のビルマ、今のミャンマーは仏教国で寺院が多いです。かつて日本が戦争で多くの犠牲を出した土地でもあります。しかし、彼らは日本人墓地を守り、今でも丁寧に掃除をしてくれている。死んだ人を大切にするのは当然だと言うんです」と、静かに話す。また、ラオスでは仲良くなった店主が翌早朝に行う僧侶への托鉢(たくはつ)セレモニーに誘ってくれたことも。「ただの旅行客。本当に翌朝来るかもわからないのに、私の分を用意してくれていて。どの国に行っても、折り紙を渡した時の顔を見ても、言葉は違ってもみんな感情は共通だと学びました」
 夜は、一つ一つの経験を忘れないように1日にあったことを記録して、妻と友達にメールやフェイスブックで配信する。翌日に配るための鶴を約30個補充する。以降のルートを確認し、手配する。今ではどれも慣れた作業。そして、明るい冗談も土井さんのチャーミングポイント。しかし、こんな姿になることを誰が予想できただろう。「昔は寡黙だったので、妻や現役時代を知っている仲間は、性格の変化に驚いていますよ」と、豪快に笑う。
「モンゴルやウズベキスタンにも行ってみたいな」と、今後に夢を膨らませる土井さんは、最近はバックパッカ―経験を生かして市原市内各地で講演を行う他、白金小学校ボランティアコーディネーターとして地域の子ども達に折り紙を教えている。活動内容、他詳細は問合せを。
問合せ:土井さん
TEL.090・1707・9794
mail:doisei@hotmail.co.jp

※取材内容は2020年3月時点のものです。

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