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凛として 気品あふれる植物画 ボタニカルアーティスト 関谷圭子 さん
- 2020/11/5
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風に揺れだしそうなコスモスの花、鳥が今にも飛んで来そうなチャイニーズホーリーの赤い実。 白地に描かれた植物からは、花びらや葉の手触りまで伝わってきそうだ。 関谷圭子さんはボタニカルアートに魅了されて30年、数えきれないほどの作品を描いてきた。 国内のみならず海外の展覧会・コンクールでも多くの賞を受賞、精力的に個展も開催し、現在都内の2か所に加え津田沼の3つの教室で指導にあたっている。
ボタニカルアートとの出会い
ボタニカルアートとは水彩で描かれた植物画で、古くは古代エジプトや中国で薬草を見分けるために用いられた。大航海時代に世界各地の珍しい植物を詳細に描いてヨーロッパ本国へ送られた絵があまりにも素晴らしいことから、主に19世紀のイギリスやフランスで部屋の装飾として大流行した。
関谷さんは、1965年に多摩美術大学デザイン科卒業後、NHKアートでテレビ番組のタイトルを制作。子ども番組の『できるかな』などを担当した。結婚・出産を機に退職し、子育て中は大手出版社の雑誌のカットを描くなどして仕事を継続。そんな関谷さんがボタニカルアートと出会ったのは、実母と義父母の介護が始まり、「介護の傍ら何かできることを」と思っていた矢先のことだった。介護用品を買いに出かけたデパートで、『日本ボタニカルアート展』が開催されていた。数ある作品の中から佐藤広喜氏の絵に「風を感じ」て、教室に通い始めたのが1991年のことだ。
教室を共にした小須田久美子さんは、同じくボタニカルアーティストとして活躍している。関谷さんとは、それ以来の「いい仲間」だ。2人は昭和18年生まれの同い年で、2017年には都内で『二人展』を開催した。毎年カレンダーも共作している。
植物から力を
植物画は植物をありのままに描くので個性が出ないと思われることもあるが、「360度ひと回りさせてどの角度が好きか、バラの花にしてもつぼみの開き方はどのくらいが好みか、人によって切り取る場面は実に様々です」と関谷さんは説明する。
関谷さんは描きたい題材に出会うと外でデッサンをする。持ち帰ることができた場合は、テーブルの上で咲いている状態を再現。時にルーペをのぞきながら無心に観察し、インターネットで詳しく調べることもある。「ボタニカルアートを始めるまでは、1つのものをそこまで丁寧に見ていなかったと感じます。『しべ』はこうなっているとか、花びらだと思っていたら『がく』だったなど、1つ1つの発見がとても新鮮です。描くことで植物からエネルギーをもらっています」。
一宮の地で
都内在住の関谷さん夫妻は22年程前から一宮町東浪見にセカンドハウスを構え、教室などの合間を縫って多くの時間を一宮で過ごしてきた。「ここがあったから、今の私がある」と関谷さん。自然と人、様々な出会いに恵まれたという。
「散歩がすごく楽しい」と話す関谷さんは、散歩コースの『ノブドウ』が色づくのを1週間待ったり、赤くはぜる『トベラ』の実がちょうどいい開き具合になるまで通ったり、植物の時間の流れにじっと寄り添い、愛情深い眼差しを向ける。
一宮町一宮のアートサロン『茶房けい』の飯島さん夫妻とは、家族ぐるみの付き合いだ。今年9月、同サロンで2007年に続き個展を開催。日本清興美術展にて清興大賞を受賞した『クズとヨモギ』を含む30点もの植物画が、サロンを彩った。訪れた女性は、「素敵ですね。こんな絵が描けたらいいなと憧れます」と作品に見入っていた。茶房けいのマスター・飯島和樹さんは関谷さんの作品の魅力について、「緻密な色使いとデッサンの巧みさがすごいなと感じます」と語る。妻のけいさんが丹精込めた庭の草花も関谷さんの絵心をくすぐる。花や実をもらって帰り、作品に描くこともよくあったそうだ。
関谷さん夫妻は7月より長女家族との同居を機に一宮から離れることとなったが、折に触れてまたいつでも訪れたいという気持ちでいる。「植物が好きで絵が好き」という関谷さん。「これだけ描いても、世の中にはいっぱい植物がある。少しでもたくさんのものを描きたい」と意欲は尽きない。『2021年 ボタニカルアートカレンダー 小須田久美子&関谷圭子』は、税込800円で『茶房けい』にて購入可能。興味のある方は問合せを。
問合せ:関谷さん
TEL.090・3546・9219
アートサロン『茶房けい』
TEL.0475・40・0862
定休日:月・火