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バラが紡いでくれた世界は、なんてきれいなことだろう【千葉市】
- 2022/12/8
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- 千葉市
【写真】アデレードのローズ トライアル ガーデンにて
今秋、オーストラリアで開催された世界バラ会連合の『第19回世界大会アデレード2022』に参加したのは、千葉県立中央博物館で資料管理研究科長の御巫(みかなぎ)由紀さん。3年前に出版した著作『野ばらハンドブック』で同大会の優秀書籍賞を受賞した。「本では、日本の野ばらから伝統園芸品種など長く栽培されてきたバラまで、34種類を取り上げています。専門家やオタクといっても過言ではないマニアックなバラ愛好家たちが集まったのが世界バラ会連合。バラを知り尽くしている人々によって選ばれた、認められたという事実に、じわじわと喜びが増しています」と話す、御巫さん。同著では著名な写真家に依頼して、バラの細部や断面のすべてにピントを合わせる、深度合成という技術で撮影を行った。「普通の写真は必ずどこかピントが合わなくなる。でも、この技術ならイラストより正確にバラの姿を写せます。ただ、バラは生きているので刻々と姿を変えてしまい、特に繊細な野ばらの花を撮影できるのは早朝のわずか1時間」という御巫さんは、写真家と2人で4〜6月、バラ園に通ってこれぞというモデルを探し続けた。納得できるまで撮り続けた結果、写真が揃うまでに4年を費やしていた。
千葉県習志野市出身の御巫さんは、庭にバラがたくさん咲く家で育った。「小さい頃はちぎってオママゴトに使うくらいだった」と笑うが、転機は大学生の時に訪れた。日本女子大学理学部に通っていた時、国立科学博物館のアルバイトと卒業論文を体験することで、将来は博物館で働きたいと思うように。「大学院に進学後、研究テーマを探しているうちに京成バラ園を訪れる機会がありました。そこでバラの巨匠である鈴木省三氏にお会いして、人生をかけている姿に触発されたんです。バラはメジャーな花で、すでに知り尽くされている。バラの研究テーマで博士号を取ったのは、私を含めて国内で数人です」というが、御巫さんは「まだまだ、バラのことはなんでも知りたい」と、想いを告げる。
今回開催されたバラ会連合の世界大会には、世界から360人が集結した。韓国やオーストラリア、ロシアやウクライナ、ドイツなど国境を越えたバラを愛する人々が連日、バラのことや近況を語り合った。御巫さんは、「バラの花弁は、初め5枚だけでした。人間が人間の美意識を加えたことで変化していった。ある意味、遠い場所まで連れてきてしまったのかもしれない。でも、人間とバラは共に生き続けてきたんです」と、話す。そう、バラは常に人と生きて、人と人を繋げてきたのだ。「私はバラが好き。でも、バラを通じて出会う世界中の仲間がもっと好きです。研究対象として不足のないバラを、もっと研究し続けていこうと思います」と、爽やかな笑顔で話す御巫さんだった。本について詳細は問合せを。
・野ばらハンドブック 文一総合出版 2019年6月出版
問合せ:千葉県立中央博物館
Tel.043・265・3111