久しぶりに故郷の雑木林の中を散策しました。東日本大震災以来で、10年以上も足を踏み入れなかった事になります。以前は帰省する度、1〜2時間ほど歩いて身も心もリフレッシュさせ、春には山芹を摘んだり、鳥の鳴き声を聴いたり、湧き水を汲んだり、木の枝などを拾ったりして楽しんでいました。山の中腹の岩の間から流れ出る湧水は、夏でもひんやりと冷たく、冬は温かく感じます。軟質の水は甘みを帯びて喉越しがよく、散策した後に飲む水は最高のご馳走でした。震災後、放射能も心配でしたが、山の姿が変わってしまったのではないかという不安から、どうしても躊躇いを拭う事ができませんでした。ですがあれからもうだいぶ歳月も流れています。自分自身も変わっていかなければなりません。

 季節が冬という事もあり緑こそありませんでしたが、山は何事も無かったように変わっておらず、いつものように突然の訪問にも暖かく迎え入れてくれました。今回は籠を作るのに必要なアケビや藤の蔦を採ってみました。昔は山の麓に住んでいたお婆さんと共に、よく山に入っては幾つかの編み方を教えて貰いました。地面から出た蔦は乾燥して曲げると折れやすいので、なるべく地面を這っている十分に湿った部分を使います。地上に出て乾燥している部分は、一晩水に漬けておくだけで曲げやすくなるので編むことが可能になります。

 藤とアケビの蔦を手に入れたので、その2つを使った籠を作ってみました。久しぶりに編んだので少し感覚を忘れていましたが、段々と思い出して手が慣れてきました。藤の蔦はアケビのそれよりも太いので骨組みとして使います。束ねた藤の蔦の先端を麻紐できつく縛り、そこを出発点としてアケビの蔦を交互に編んでいきます。編みながらお婆さんと楽しくお喋りをしながら籠を編んでいた頃が、ついこの間の出来事のように思い出されました。

 

◇長谷川良二。長柄町在住。ハーブコーディネーター、ガーデニングコーディネーター、歯科医師。市原を中心に公民館でのハーブの指導などをしながら自然栽培で野菜を育て、養鶏、養蜂にもトライ中。

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