医療用ウイッグでがん治療の髪の悩みに応える~再現美容師・小高由美さん~【木更津市】

 袖ケ浦市在住、木更津で美容師をしている小高由美さんは、再現美容師としても活躍している。再現美容師とは、がんの治療などで髪を失ってしまった人のための医療用ウイッグを、元の髪型に近い形にカットし、メンテンナスなどのアフターケアをする美容師のこと。小高さんは「全国で50名ほどいますが、あまり知られていない分野かもしれません」と話す。

元気になる手伝いを

 小高さんが美容師として独立し、木更津にプライベートサロン『RAPPORT(ラポール)』を開いたのは8年前。「子どもの頃から学校のような団体が好きではなかった」という小高さんは、会社に就職して1年で「何か違うと感じ、手に職をつけるのがいいかも」と両親の大反対を押し切って、憧れの美容師を目指し美容学校に入ったという。「美容師として働くと、お客様との会話が楽しく、いつか独立して全部ひとりで担当するプライベートサロンを開こう、と思うようになりました。再現美容師を知ったのも美容室に勤めている時で、独立したらやってみたい、美容師として皆さんが元気になるお手伝いができたら、と考えました」

医療用ウイッグ『ヘアエピテーゼ』。カラーはナチュラルブラック(写真)とブラウン。これを装着し、好みのスタイルにカットする

 そうして念願叶って独立したが、再現美容師の資格を得たのは昨年のこと。「勉強をするのに、迷ってしまって。医療用ウイッグは色々なメーカーがありますし、どこが一番良いのか、分からなかったんです。そのうち、先輩の美容師が乳がんのお客様からNPO法人日本ヘアエピテーゼ協会を薦められて、セミナーを受けたと聞いて。実際に治療の一環として使っている方が良いというなら、と協会で学びました」

 小高さんが扱う医療用ウイッグ『ヘアエピテーゼ』は、治療でデリケートになった地肌を守れるよう、頭頂部に素肌に近い人工頭皮を使っている。分け目などの地肌は、一見しただけでは本物と見分けがつかず、髪の毛である人工毛も、自然な艶が出るよう特殊な加工が施され、人毛とブレンドされている。さらに職人が1本1本すべて手植えするため、質感も髪型もとても自然で、しっかりフィッティングすると、ウイッグとはまったく気づかれないという。「その分、とても繊細です。人工頭皮は伸びやすいので、普通に髪を切るように引っ張って切ると、フィッティング時に短くなってしまいます。なので引っ張らないよう切る事が肝心です」と小高さん。

美容師として悩みに寄り添う

 がんの投薬治療で全部抜け落ちた髪は、個人差はあるが、ボブスタイルに生え揃うまで約2年もかかるという。「髪がないというのは、やはり気持ち的に負担が大きく、悩んでいる方が非常に多いです。治療の過程でうつ症状がでる場合もありますし、治療が終わっても外出できない方もいらっしゃいます。そんな時に、自分好みの髪型にできる医療用ウイッグをつけると、皆さん、あっという間に表情が明るくなるんです」

 医療用ウイッグはアジャスターがついており、頭のサイズに合わせてフィットする。ただ、きちんと合わせないと、ずれたり動いたり、髪型が不自然になってしまう。「そのため、1年間のアフターケアが無料でついています。何度か来ていただいて、フィッティングの調整と地毛の伸び方に合わせ、ウイッグをお好みのカットに整えていきます」。最初は長めのカットで、多少のずれがあっても目立たないスタイルに。本人がウイッグの装着に慣れたら、仕上げのカット。この間、ウィッグで気になることがあったら何度来店し、相談してもOKだそうだ。また、他社の医療用ウイッグのカットを依頼されたり、ウイッグ選びのアドバイスをしたり、時には円形脱毛症の相談を受けたりすることもある。

「私の店はプライベートサロンなので、常にお客様ひとりと私ひとりの空間。気兼ねなく相談できる環境作りも重要だと思っています。がんは多くの人がかかる身近な病ですが、死に直結したイメージも強く、ご本人にも家族にも大変な病気です。治療で髪質が変わったり、なかなか前髪が伸びなかったり、症状も様々。医療用ウイッグで少しでも気持ちを明るく、リラックスした時間を過ごしていただいて、笑顔になっていただければ何より嬉しいです」と小高さんは話した。

 

問合せ:小高さん
美容室RAPPORT(ラポール) 
木更津市真舟3の3の1
9時~ 応相談・予約制
定休:(木)&第1・3(水)
Tel.0438・40・4013
https://www.hair-epithese.com/rapport/

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