老鴉柿の魅力
- 2013/12/13
- 外房版
形や色、大きさが多彩な
老鴉柿の魅力
秋の果樹のひとつ、柿の木。季節の味覚の代表格でもある。一方、盆栽の世界では女性にも人気がある「姫柿」こと老鴉柿(老爺柿とも表記される)は、中国から輸入され、日本人が盆栽仕立てにしたのち、普及したのは2000年以降と、まだ歴史は浅い。
この小さな愛らしい実物盆栽に惹かれ、20年ほど前から育てているのが、茂原市在住の吉野庸弘さん。いすみ市岬町出身で茂原市内の企業に就職し、間もなく訪れた盆栽ブームで勤務先に園芸部が創設され入部した。「盆栽を始めたのは、子どもが生まれたから。昔の言い伝えで、男子誕生の時は山に松や杉の苗木を植える。それは男50で家が建つといわれ、家を建てる助けになり、女子の誕生時には桐の苗木を植え、嫁入り道具に持たせる箪笥にしたという。団地住まいの我が家は、長女誕生時は五葉松を、長男誕生の時は黒松の種を植木鉢に蒔きました。これらの記念樹を育てたのが、私の盆栽人生のスタートでした」と懐かしそうに微笑む吉野さん。
定年間近になり、「定年後は何をしようかなと考えていた」ところ、展示会で老鴉柿に出会った。「当時は、まだ数も少なく値段も高かった。1粒100円の種を10粒購入しました」と話す。翌年、芽が出たものは今も大事に育てている。「5、6年育て雄木に花が咲き、翌年には実をつける雌木に花が咲いた。白い花が咲き受粉して花が落ちると、1ミリから1.5ミリの実の先端が出て、5月から6月の間に大きくなり、8月になると実が完成する」という。
そうして10月に入ると、葉が落ちて実が色づく。野生では2メートルぐらいまで大きくなるが、どのぐらいの大きさにするかは人それぞれだとか。吉野さんは、「あまり小さくすると実つきが悪くなる。バランスを考えて30センチから60センチになるよう、枝が上に伸びる性質なのでカットしています。実をつけるのは大変で、木に力がないと花が咲かず、咲いても実が落ちてしまう。これをジューンドロップ(6月の落下)というんですが、木の負担を減らすためにも、12月に入る前に実を取る。日頃の世話は、まず水やり。次に草取りと肥料やりですね。そして、来年花を咲かせる芽を残し、伸びた芽をはさみで切る」そうして実が色づき鑑賞に適するのが10月末から11月末にかけて。
「実の形、枝のこなれと色を見てほしい。初めて見る人は、これは何?とかリンゴですか?と尋ねる人もいますが、淡い橙色から濃い紅色まで様々なんですよ。また、緑色から朱色に変わっていくのも楽しめます」と語る吉野さん。今年秋も5回目の作品展を長生郡一宮町のアートサロン・茶房けいで開催した。来年も老鴉柿の魅力を多くの人に伝えたいと笑顔をみせる。