老鴉柿の魅力

形や色、大きさが多彩な
老鴉柿の魅力

 秋の果樹のひとつ、柿の木。季節の味覚の代表格でもある。一方、盆栽の世界では女性にも人気がある「姫柿」こと老鴉柿(老爺柿とも表記される)は、中国から輸入され、日本人が盆栽仕立てにしたのち、普及したのは2000年以降と、まだ歴史は浅い。
 この小さな愛らしい実物盆栽に惹かれ、20年ほど前から育てているのが、茂原市在住の吉野庸弘さん。いすみ市岬町出身で茂原市内の企業に就職し、間もなく訪れた盆栽ブームで勤務先に園芸部が創設され入部した。「盆栽を始めたのは、子どもが生まれたから。昔の言い伝えで、男子誕生の時は山に松や杉の苗木を植える。それは男50で家が建つといわれ、家を建てる助けになり、女子の誕生時には桐の苗木を植え、嫁入り道具に持たせる箪笥にしたという。団地住まいの我が家は、長女誕生時は五葉松を、長男誕生の時は黒松の種を植木鉢に蒔きました。これらの記念樹を育てたのが、私の盆栽人生のスタートでした」と懐かしそうに微笑む吉野さん。
 定年間近になり、「定年後は何をしようかなと考えていた」ところ、展示会で老鴉柿に出会った。「当時は、まだ数も少なく値段も高かった。1粒100円の種を10粒購入しました」と話す。翌年、芽が出たものは今も大事に育てている。「5、6年育て雄木に花が咲き、翌年には実をつける雌木に花が咲いた。白い花が咲き受粉して花が落ちると、1ミリから1.5ミリの実の先端が出て、5月から6月の間に大きくなり、8月になると実が完成する」という。
 そうして10月に入ると、葉が落ちて実が色づく。野生では2メートルぐらいまで大きくなるが、どのぐらいの大きさにするかは人それぞれだとか。吉野さんは、「あまり小さくすると実つきが悪くなる。バランスを考えて30センチから60センチになるよう、枝が上に伸びる性質なのでカットしています。実をつけるのは大変で、木に力がないと花が咲かず、咲いても実が落ちてしまう。これをジューンドロップ(6月の落下)というんですが、木の負担を減らすためにも、12月に入る前に実を取る。日頃の世話は、まず水やり。次に草取りと肥料やりですね。そして、来年花を咲かせる芽を残し、伸びた芽をはさみで切る」そうして実が色づき鑑賞に適するのが10月末から11月末にかけて。
「実の形、枝のこなれと色を見てほしい。初めて見る人は、これは何?とかリンゴですか?と尋ねる人もいますが、淡い橙色から濃い紅色まで様々なんですよ。また、緑色から朱色に変わっていくのも楽しめます」と語る吉野さん。今年秋も5回目の作品展を長生郡一宮町のアートサロン・茶房けいで開催した。来年も老鴉柿の魅力を多くの人に伝えたいと笑顔をみせる。 

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】各賞受賞作品の監督。前列左から2番目は映画祭実行委員長、後列左端は審査員のミヤザキさん。グランプリ受賞の全監督は前列左から3番目。 …
  2.  若い人がイチバン集まりたくなる街イチハラヘ! 未来に向けて動き出す「イチハラ」が、新しい「しあわせ」を発信する2024年の3日間、その各講…
  3.  キセキレイは、よく街中で見かけるハクセキレイの仲間ですが、個体数が少なくなっていることや、渓流や川原などの水辺を好んで生息しているため、ハ…
  4. 【写真】神明さん(左)と宗形さん  丸みのある可愛いフォルムから奏でられる心地よい音。それこそ、オカリナの最大の特徴である…
  5.  今年の夏休みのこと。学童保育のイベントで夏祭りを企画し、子どもたちは、紙で作ったお金で出店屋さんで買い物をしました。一人5百円をどう使うか…
  6.  9月の終わり頃にチャドクガの幼虫(毛虫)の毛に触れてしまったようです。チャドクガは蛾の一種で毛先に強力な毒を含んでおり、お茶の木、サザンカ…
  7.  私の生まれ育った芦別は北海道のほぼ中央に位置し、四季折々の美しい自然と星空に恵まれた町です。  昭和59年に「星の降る里」を宣言し、昭和…
  8.  きつね色にこんがり揚がった生地と香り高いカレーの取り合わせが人気のカレーパン。市原市五井西の『クロワッサンファクトリー五井店』の『じっくり…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】各賞受賞作品の監督。前列左から2番目は映画祭実行委員長、後列左端は審査員のミヤザキさん。グランプリ受賞の全監督は前列左から3番目。 …

スタッフブログ

ページ上部へ戻る