四国遍路ができなくても『お砂踏み巡礼』で気軽にお詣りを

四国遍路ができなくても『お砂踏み巡礼』で気軽にお詣りを

 四国にある八十八ヶ所の札所を拠点としながら四国全体を巡礼することを遍路というが、遍路の旅を願いながらも身体が不自由で外出が困難であったり、経済的・時間的余裕がないなど様々な事情で行けない人もいる。それは昔も今も変わらないが、特に交通の便が発達していなかった時代は、四国に行くこと自体たいへんだったという。
 そこで、行われたのが『お砂踏み巡礼』。『お砂踏み』とは、四国八十八ケ所霊場各札所の『お砂』をそれぞれ集め、その『お砂』を札所と考えて『お砂』を踏みながらお詣りすること。そのご利益は、実際に遍路したことと同じといわれている。江戸時代には、四国八十八ヶ所を模し、四国八十八ヶ所各札所のご本尊様と『お砂』を安置するうつし霊場やお砂踏み道場などが全国各地に造られたそうだ。
 時代は流れ交通の便は良くなったけれど、四国へ行けない人々のために四国八十八ケ所霊場会は「少しでも四国遍路の魅力に触れていただければ」と考え、お砂踏み一式を持ち体験してもらう『お砂踏み巡礼・遍路のこころ届けます』という企画を実施した。これは長机が4脚ほど置けるスペースがあれば、どこでも誰でも『お砂踏み』ができるありがたいもの。札所の住職たちが「来てほしい」という要望のあった施設等をキャラバンカーで回り、千葉県でも昨秋、県では初となる寺院での『お砂踏み』が行われた。
 会場となったのは、いすみ市大原の大原山七福天寺。全国でも珍しい七福神を一堂に祀った寺だ。総檜の舞台造りで斬新なデザインを伝統工法で仕上げた本堂からは房総の海が眺められる観光スポットでもある。同寺では、仏教をより深く楽しく学ぶために、『七福天友の会』をつくり、仏教思想家のひろさちやさんを最高顧問に迎え、年に4回講演会を開いたり、旅行や季刊紙の発行もしている。宗派を越えて語り合える寺でありたいとのこと。
『お砂踏み』当日は、地元だけでなく遠方からも大勢の人が訪れた。始まりを告げる太鼓を打ち鳴らす音。七福天寺の池田星真住職が「来山」した3人の住職の紹介をしたあと、『お砂踏み』の作法についての説明がされた。本堂に入る前には『塗香(ずこう)お清め』を。渡された香を全身に塗る仕草をする。それから本堂の入口で住職から一人ずつ『お清め』していただき『お砂踏み』開始。
 本堂の左右と正面に置かれた屏風には、各札所寺院のご本尊様が描かれ、その前には全国を回るので持ち運びやすいように、そしてお詣りする人がつまずかぬよう、四国八十八ヶ所霊場各札所寺院から集めた『お砂』の上に緋毛氈(ひもうせん)が敷かれている。正面奥の『お大師さま(弘法大師・空海)』の前には高野山奥の院の『お砂』がある。
 住職に先導され、参加者の皆さんは右回りに歩く。願い事や祈りを捧げる人、一心に頭を垂れ両手を合わせる人、静寂のなか丁寧に『お砂』を踏みしめる足音だけが聞こえる。『お砂踏み』を終えると、住職からお札と肌守りをいただく。『お砂踏み』を終えた皆さんは晴れ晴れとした表情で、「長年、お遍路に行きたいと思っていても、なかなか行けなかった。それが生きているうちに、こうして全部札所回りができるなんて有り難い」、「無料というのも申し訳ないくらい」と話していた。
 今年、『四国八十八ケ所霊場開創1200年』を迎える四国。この記念事業の一環として行われた『お砂踏み巡礼』は、寺社だけでなく社会福祉施設、病院、公民館、学校、仮設住宅集会所などでも開催された。

問合せ 四国八十八ケ所霊場会本部事務局
TEL 0877・56・5688
問合せ 七福天寺
TEL 0470・62・1155

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