『わが人生 捧げて悔いなし阿波おどり』

もばら阿波おどり連友会

 7月24日(金)から3日間かけて開催された『茂原七夕まつり』で大きく注目されたのは、もばら阿波おどりである。『もばら阿波おどり連友会』の会長を務める鶴岡隆之さんは、「連員には、まず自分たちが楽しむこと。そして、見ている人たちにも一緒に楽しんでもらえるように、と指導しています」という。
 『もばら阿波踊り連友会』の設立は平成19年。ガス連・ちばぎんひまわり連・双葉連・ぼうしん連・三井化学連・JRわかしお連・郵便局連の7つの企業から成る連と、地元の子供たちが集まった高師西部連、そして鶴岡さんの所属するつつじ連の全9連で構成されるのが同連友会だ。もばら阿波おどりには、現在総勢千人以上が参加している。「阿波おどりは1人ではできないので、連員みんなの気持ちをひとつにまとめることに力を注いできました」と鶴岡さん。
 では、なぜ連友会は結成されたのだろうか。阿波おどりの本場である徳島県には、約400年の歴史がある。赤ん坊は産まれてすぐに家族や隣近所の人が踊っている姿を見て成長する。毎年、勉強のために徳島に通う鶴岡さんは、「徳島の人たちのDNAには、阿波おどりの精神が刻み込まれているのを感じます。茂原市でも39年間、もばら踊りというのを行っていましたが、とても中途半端なものでした。それならば、自分たちで阿波おどりを学ぼうと決めました」と振り返る。
 かつて、鶴岡さんと同じように徳島の阿波踊りを地元の活性化のために取り込もうと考えたのが都内高円寺の住民。近隣の街には大きな祭りがあり、盛んに交流を行って知名度をあげていた。このままでは、自分たちの街がすたれてしまうのではと危惧した住民たちは、まだ瀬戸大橋もない時代に何度も徳島へ足を運んだ。そして、高円寺阿波おどりは今では59年の歴史を築き、西は徳島、東は高円寺といわれるまでに成長した。「徳島県に通う以前、高円寺の阿波おどりを初めて見た時、言葉には言い表せないないほどの衝撃を受けた」というのも、「技術だけでなくマナーや立ち居振る舞いなど全ての所作に強い精神力と情熱を感じ取った」からだという。
 長い年月を経て徳島で培われた伝統と品位が、高円寺に伝わり、茂原へ広がろうとしている。手を上げて足を運べば阿波おどりといわれるように、『踊り』そのものは誰でも簡単に始めることができる。だが、その世界に一歩足を踏み込めば奥底はとてつもなく深いことを知る。腰を落とす、つま先から指先まで神経を行きわたらせる、動きのひとつひとつを意識する。「阿波おどりの上達に近道はありません。また、阿波おどりにゴールはありません。徳島では、80歳になろうかという方たちが毎日トレーニングをして踊っているんです。若い人のようなキレはなくても、格好いいじゃないですか」と熱く語る鶴岡さんに感化されたかのように、阿波おどりに夢中になる若者も多くなっている。
 今年2月に開催された『冬の七夕まつり』では、雪の中、つつじ連が真っ白な息とともに阿波おどりを披露し、観客からは喜びの声が上がった。『茂原七夕まつり』に向けて10日前に行われた練習では、練習場所の茂原市民会館に熱のこもったお囃子が響いた。「やっとさー、やっとやっと!」と張りのある声に、つつじ連の連員が手を上げて足を進める。太鼓の振動が肌に伝わり、会場全体に熱気がみなぎる。
 「高円寺のある連長に言われたことがあるんです。阿波おどりを踊る人には3種類の人間がいる、と。1つは下手くそだけれど、練習をして上手くなる人。2つ目は元々上手なうえに、練習をして磨きのかかる人。そして最後は、上手いのに、そこで満足して練習せず下手くそになる人」と真剣な顔を見せる鶴岡さんは、「つつじ連は七夕だけでなく年間を通して活動しており、少しずつ向上しています。でも、決して手をゆるめてはいけないんです。『阿波おどりはお稽古ごと』なんです」と続けた。『歴史』を作り上げるためには努力と継続が不可欠で、1つの喜びの陰には9つの苦しみがあるという。だが、数百年の歴史の1ページが担え、地元もばらで誰からも愛される阿波おどりが作れるのであれば、それはなんと大きな価値のあるものだろう。

問合せ 鶴岡さん
TEL 090・1995・4296
E-mail tsutsuji-ren@city.mobara.chiba.jp

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